カラオケで思うように声が出ないと、加齢のせいだと感じる方は少なくありません。
声が出にくくなる原因は、加齢だけで決まるわけではありません。年齢を重ねていても、声の出し方を見直していくことで、声は改善の方向へ進みます。
この記事では、カラオケで声が出ない本当の原因と、60代から始められる呼吸を整えるボイトレ手順を、順を追って紹介します。
カラオケで声が出ない原因は本当に加齢なのか?
カラオケで声が出ないと感じる時、加齢のせいだと考える方は多いものです。声が出にくくなる主な原因は別のところにあり、加齢はその原因を感じやすくしている要素にすぎません。
ここでは、その主な原因と、そこから派生して起こる体の状態を、順番に見ていきます。
加齢で声がどのように変わっていくのかを詳しく知りたい方は、声の老化の真実もあわせてご覧ください。
声を出す時に呼吸の筋肉が動いていない
カラオケで声が出ない時、加齢以上に大きな原因として関わっているのが、声を出す時に本来動かないといけない部分が動いていない、ということです。その動かないといけない部分が、呼吸の筋肉です。
声は、呼吸の筋肉が動くことで息が流れ、その息の流れを喉の中にある声帯が受けることで生まれます。だから、声は呼吸と喉が一緒に作るものです。呼吸の筋肉とは、お腹や脇腹、背中まわりにある、体の内側の体幹の筋肉のことです。普段この体幹の筋肉はあまり意識しないので、加齢とともに弱くなりやすい性質があります。
年齢を重ねると、声を出す時に呼吸の筋肉が十分に動かず、息の流れが弱くなったり不安定になったりします。その結果、声が出しにくくなります。久しぶりにカラオケで歌うと、すぐ苦しくなる、声が思ったように乗らないと感じるのは、ここに大きく関わっています。
歌うときのお腹の動きをもう少し詳しく知りたい方は、歌うときお腹はへこます?ふくらむ?腹式呼吸の仕組みと正しいお腹の動きを解説が参考になります。
喉だけで声を出そうとしている
呼吸の筋肉が動かず息の流れが不安定になると、声を出す時に喉だけで何とか声を出そうとしてしまいます。すると、喉に余計な力が入りやすくなります。喉に余計な力が入ると、喉の中の動きが硬くなり、声帯も自由に動きにくくなります。声帯が自由に動かないと、思うように音程を取れなかったり、声がかたく聞こえたりします。
出したい声を自然に出すことが難しくなるので、ますます喉で頑張って出そうとしてしまい、さらに力が入るという流れになります。カラオケで声が出ないと感じる時に共通して起きているのが、この「喉だけで声を出そうとしている」状態です。
喉だけで歌ってしまう原因と改善のしかたは、喉で歌わない方法|喉で歌ってしまう原因と改善法でくわしくご紹介しています。
緊張で喉に余計な力が入っている
カラオケで人前で歌う時、「うまく歌わなければ」「間違えたくない」という気持ちが強くなると、無意識に体に力が入ります。特に力が入りやすいのが、首や喉の周辺です。首や喉の周辺が硬くなると、息が自然に流れにくくなります。すると、息の流れが浅くなったり止まりやすくなったりして、喉だけで声を出そうとする状態が起きます。
普段はもう少し楽に歌えるのに、誰かの前で歌うと急に声が出にくくなる、という経験はこの状態にあたります。緊張で体が硬くなり、息と喉が一緒に働かなくなっていることが理由です。
歌うときに喉へ力が入ってしまう理由をもう少し知りたい方は、60代の方が歌うと力む原因とは?喉に力が入る理由と改善の考え方もご覧ください。
高い声が出にくくなる理由も同じ
カラオケで「高い声が出なくなった」と感じる方も多いと思います。高い声が出にくくなる理由も、ここまで見てきた原因と同じ流れにあります。
高い声を出すには、呼吸の支えが特に必要です。息の流れがしっかりしていないと、声帯は高い音に合わせて十分に動けません。呼吸の筋肉が動かず息の流れが不安定なまま高い声を出そうとすると、喉に余計な力が入り、声が引っかかったり詰まったりします。高い声が出にくくなるのも、呼吸が支えられていないことが大きく関わっています。
高い声で喉が苦しくなる方は、高音で喉仏が上がる本当の原因|歌で喉が楽になる5ステップのボイトレが参考になります。
カラオケで声が出ない時はまず呼吸から整える

カラオケで声が出ない主な原因は、声を出す時に呼吸の筋肉が動いていないことでした。改善を目指すなら、ここから手をつけていくことが大切です。ここでは、改善の入口がなぜ呼吸なのか、そして呼吸を整える入口として丹田が大切な理由を、順番に見ていきます。
呼吸が改善の入口になる理由
カラオケで声が出ないと感じると、まずは喉を何とかしようと考えがちです。しかし、喉を直接トレーニングしようとしても、喉の中の動きはとても複雑で、一つずつ意識して動かすのは現実的ではありません。しかも、喉に意識が集中すると、かえって力みが強くなり、声が出しにくくなることもあります。
その点、呼吸の筋肉は意識しやすく、喉から離れたところにあるため、整えやすい性質があります。だから、改善の入口としては呼吸から手をつけるのが自然です。呼吸が整うと、息の流れが安定します。息の流れが安定すると、声を出す時に喉だけでなく呼吸も使われるようになり、喉に余計な力が入りにくくなります。その結果、声が出しやすくなります。
丹田とは
呼吸を整える入口になるのが、丹田です。丹田とは、おへその少し下あたりに位置する、体の中心を意識するポイントのことです。この場所を意識することで、お腹や背中まわりにある呼吸の筋肉が動きやすくなり、息の流れが安定しやすくなります。丹田は、声を出すための土台になる、息を安定させる起点だと考えるとわかりやすいです。
丹田を使って声を出す方法を知りたい方は、丹田から声を出す方法|初心者の方が知っておきたい発声の基本でくわしくご紹介しています。
丹田トレーニングの効果
丹田を意識した呼吸のトレーニングを続けると、声を出す時に呼吸の筋肉が動きやすくなります。呼吸の筋肉が動くと、息の流れが安定します。息の流れが安定すると、声を出す時に喉だけで頑張る必要が減ります。すると、喉に余計な力が入らなくなり、声帯も自由に動けるようになります。
声帯が自由に動けるようになると、声の響きが整い、声量も出しやすくなります。高い声を出そうとすると喉が苦しくなる方でも、呼吸の支えが整ってくると、喉が楽になり声が出しやすくなります。カラオケで声が出ない状態は、こうして呼吸の働きから整えていくことで、年齢を重ねていても改善の方向へ進みます。
声を支える呼吸の感覚をもう少し深めたい方は、ご高齢者の方の声が小さい原因と改善も参考になります。
60代から始める呼吸を整えるボイトレ手順
ここからは、呼吸を整えるための具体的な練習手順を、3つの段階に分けて紹介します。大切なのは、順序です。順序を間違えると、せっかく練習しても効果が出にくいだけでなく、かえって声の状態を悪くしてしまうことがあります。
特に、いきなり喉の使い方から何とかしようとすると、喉に意識が集中して力みやすくなります。喉から離れた準備運動から始めて、呼吸の練習を経て、最後に歌への応用へと進んでいくのが、無理なく改善につなげる流れです。
1. 姿勢を整える準備運動
発声の前に行う準備運動は、声を出しやすくするための土台作りです。
まず、立ち姿勢で足裏全体をしっかりと床につけ、体重を左右均等にかけます。膝は軽くゆるめておくと、体の重心が安定し、息の流れが安定しやすくなります。
次に、肩の力をふっと抜き、顎まわりの緊張をゆるめます。体のどこか一部に力が入っていると声も硬くなるので、全身を軽く揺らすようにして、余計な力を抜くのが理想です。
歌う前に、息をゆっくり吐く動きを数回行うことで、心も体も落ち着き、無理のない状態で発声に入れます。
2. 丹田を意識して息の流れを安定させる
姿勢が整ったら、丹田を意識した呼吸の練習に進みます。
丹田を支えにして息の流れを安定させると、声帯の動きが整いやすくなります。息の流れが強すぎたり弱すぎたりすると、声帯の動きが乱れて声が不安定になるからです。
このとき大切なのは、息を「自然に流し続ける」感覚で行うことです。息を頑張って出そうとすると、かえって流れが乱れやすくなります。
丹田に意識を置いたまま、息の流れを途切れさせずに吐き続けると、喉に余計な力をかけずに発声の準備が整います。
3. 簡単な曲から丹田を意識して歌う
呼吸の練習で土台ができたら、実際に歌う段階に進みます。
ここで大切なのは、最初から難しい曲で練習しないことです。難しい曲は音程やリズム、高さに意識が向きやすく、喉で頑張ってしまいやすくなります。
まずは、無理なく歌える簡単な曲から始めて、丹田を意識しながら歌う感覚をつかんでいきます。歌詞や音程を追うことよりも、息の流れと丹田の意識を保ったまま歌うことを優先します。
簡単な曲で慣れてきたら、少しずつ難しい曲でも丹田を意識して歌えるか試していきます。ここで大切なのは、喉だけに頼らず歌えるかを確かめながら、歌える範囲を少しずつ広げていくことです。上手く歌えるかどうかを急いで判断する必要はありません。
こうして練習を重ねることで、呼吸の筋肉が動きやすくなり、カラオケで声が出ない状態も改善の方向へ進みます。
60代からのボイトレで声が変わる理由をくわしく知りたい方は、60代からのボイストレーニングは遅くない|声が変わる理由と取り組み方もご覧ください。。
まとめ|年齢を重ねても声は改善の方向へ進む

カラオケで声が出ないと感じる時、加齢のせいだと考える方は多いものです。しかし、声が出にくくなる主な原因は別のところにあり、加齢はその原因を感じやすくしている要素にすぎません。
主な原因は、声を出す時に呼吸の筋肉が動いていないことです。声は呼吸と喉が一緒に作るものなので、呼吸の筋肉が動かないと喉だけで声を出そうとしてしまい、発声のバランスが崩れて声が出にくくなります。
改善の入口は、呼吸を整えることです。喉から離れた所から手をつけるのが、無理なく改善につなげる流れになります。
具体的には、姿勢を整える準備運動から始めて、丹田を意識した息の流れの安定化、簡単な曲から丹田を意識して歌う、という3つの段階で進めていきます。この順序で取り組むことで、呼吸の筋肉が動きやすくなり、声は改善の方向へ進みます。年齢を重ねていても、正しい順序で取り組めば声は変わっていきます。諦める必要はありません。




