年齢を重ねるにつれて、「声が小さくなった」「会話で聞き返されることが増えた」と悩む高齢者の方は少なくありません。
声の小ささは、周囲とのコミュニケーションに不安を感じる原因にもなり、外出や人との交流をためらってしまうこともあります。
しかし、正しいボイストレーニングを取り入れることで、声の力は無理なく取り戻すことが可能です。
この記事では、高齢者向けボイストレーニングが声が小さい悩みをどのように解決できるのか、その理由をわかりやすく解説していきます。
声が小さくなる主な原因とは?
加齢による声帯の筋力低下
年齢を重ねると、体の筋肉が弱くなるのと同じように、声を作る「声帯」もだんだん力が弱くなっていきます。
声帯は、息を通してふるえることで音を作る大切な場所です。
しかし、筋力が低下すると、声帯がしっかり閉じなくなり、ふるえ方も弱くなってしまいます。
そのため、出る声が小さくなったり、かすれたりしてしまうのです。
これは特別な病気ではなく、誰にでも起こる自然な変化です。
ただ、声帯の筋肉も正しく使い続けることで、ある程度元気を保つことができると言われています。
呼吸筋(息を吐く筋肉)の弱化
年齢を重ねると、息を吐くために使う呼吸筋という筋肉も、少しずつ弱くなっていきます。
呼吸筋が弱くなると、声を出すために必要な強い息をうまく送り出せなくなります。
息の力が弱いと、声帯もうまくふるえず、声が小さくなったり、長く声を出し続けることが難しくなってしまいます。
また、息を吸ったり吐いたりする動きが小さくなることで、体全体の元気も下がってしまうことがあります。
このように、呼吸筋の弱化は、声だけでなく健康全体にも関わってくるため、注意が必要です。
姿勢の悪化
年齢を重ねると、背中や腰の筋肉が弱くなり、自然と姿勢が悪くなりやすくなります。
猫背のように体が丸くなると、胸やお腹が縮こまり、息をしっかり吸ったり吐いたりすることが難しくなります。
息の通り道が狭くなるため、声を出すために必要な息の力が弱くなり、その結果、声も小さくなってしまうのです。
また、姿勢が悪いと、声帯にかかる力のバランスもくずれやすくなり、声を安定して出すことが難しくなります。
このように、正しい姿勢を保つことは、声を元気に保つためにもとても大切なことです。
声を出す機会の減少
年齢を重ねると、仕事を引退したり、家で過ごす時間が長くなったりして、人と話す機会が少なくなることがあります。
声を出すことが減ると、声を作る声帯の動きもだんだん弱くなってしまいます。
声帯は、使わないでいると筋肉がかたくなり、ふるえも小さくなるため、声がかすれたり、小さくなったりしやすくなります。
また、声を出すために必要な呼吸の力も弱まってしまうことがあります。
このように、毎日少しでも声を出すことは、声を元気に保つためにとても大切なことなのです。
心理的な影響(自信の喪失、萎縮)
年齢を重ねると、声が小さくなったり、聞き返されたりすることが増え、自信を失ってしまうことがあります。
「うまく話せないかもしれない」と思うと、声を出すことにためらいが生まれ、体も自然と縮こまってしまいます。
このように心が萎縮すると、声を出す力も弱くなり、ますます声が小さくなるという悪い流れができてしまいます。
また、声を出すときに不安や緊張が強くなると、息の流れも乱れやすくなり、はっきりした声が出にくくなります。
心の状態は、声の元気さに大きく影響するのです。
高齢者向けボイストレーニングの重要ポイント
無理をせず、毎日少しずつ続けること
年齢を重ねると、体も声も少しずつ変化していきます。
そのため、ボイストレーニングを始めるときは、無理をせず、毎日少しずつ続けることがとても大切です。
一度にたくさん練習しようとすると、喉に負担がかかり、声を痛めてしまうことがあります。
毎日短い時間でも続けることで、声を出す筋肉や息を使う力が、少しずつ元気を取り戻していきます。
ゆっくりでもいいので、毎日の積み重ねが、明るくはっきりした声へとつながっていきます。
正しい呼吸法(腹式呼吸をやさしく導入)
声を出すときに大切なのは、正しい呼吸のしかたです。
特に「腹式呼吸」とよばれる、お腹を使った呼吸をやさしく取り入れることが大切です。
腹式呼吸では、胸だけでなくお腹もふくらませながら、ゆっくり深く息を吸います。
そうすることで、たくさんの空気を体に取り込み、しっかりとした声を出すことができるようになります。
胸だけで浅く呼吸してしまうと、すぐに息が足りなくなり、声も小さくなりがちです。
無理をせず、気持ちよくお腹を動かすことを意識しながら練習していきましょう。
姿勢の改善(立っても座ってもできる方法)
声を出すときは、良い姿勢を保つことがとても大切です。
立っているときも、座っているときも、背筋をやさしく伸ばして体をまっすぐにしましょう。
背中が丸くなると、胸やお腹が縮こまってしまい、うまく息を吸ったり吐いたりできなくなります。
また、声も弱くなってしまいます。
姿勢を整えると、呼吸が楽になり、声も自然に大きくなります。
無理に力を入れるのではなく、頭のてっぺんを空に向かって引っぱられるようなイメージで、軽く体を伸ばすとよいでしょう。
声を遠くに飛ばすイメージ(響きのトレーニング)
声を出すときは、「声を遠くに飛ばす」イメージを持つことが大切です。
ただ大きな声を出そうとすると、喉に力が入りすぎてしまい、かえって声が出にくくなります。
そこで、声を口の中や頭の中で響かせる「響きのトレーニング」が役に立ちます。
声を口の前に軽く押し出すような気持ちで出すと、自然に声が前に広がり、遠くまで届きやすくなります。
無理にがんばるのではなく、楽に響きを感じながら声を出すことがポイントです。
少しずつ、声が広がる感覚を身につけていきましょう。
日常生活で「声を出す」習慣を作る
声を元気に保つためには、日常生活の中で「声を出す」習慣を作ることがとても大切です。
たとえば、朝起きたときにあいさつをする、テレビを見ながら小さな声でまねして話す、歌を口ずさむなど、特別な練習でなくてもかまいません。
声は使わないとだんだん弱くなってしまうので、毎日少しでも声を出すことが大切です。
楽しい気持ちで声を使うと、自然と声も元気になっていきます。
無理をせず、生活の中で声を育てていきましょう。
高齢者におすすめの簡単ボイストレーニングメニュー
① 息を深く吸う練習(胸ではなくお腹を意識)
声を元気にするためには、まず息をしっかり吸う練習が大切です。
このとき、胸だけをふくらませるのではなく、お腹を意識して広げるように息を吸います。
お腹に空気をためるイメージで、ゆっくりと深く吸い込みましょう。
胸だけで吸うと、息の量が少なくなり、すぐに苦しくなってしまいます。
お腹をふくらませる呼吸を身につけると、たっぷりと息が使えるようになり、声も安定して出せるようになります。
毎日少しずつ、おだやかに練習することが大切です。
② ハミング(無理に声を張り上げず響きを感じる)
ハミングとは、口を閉じたまま「んー」と声を出す練習のことです。
無理に大きな声を出そうとせず、やさしく声を響かせることを意識しましょう。
鼻の奥や顔の中に、びりびりとした響きを感じられると、うまくできている証拠です。
ハミングを続けることで、声の響きを育てることができ、自然に通る声が出るようになります。
また、喉に負担がかかりにくいので、毎日少しずつ気軽に取り組むことができます。
声を遠くに届けるための第一歩として、とても大切な練習です。
③ やさしい発声練習(「あー」と気持ちよく伸ばす)
やさしい発声練習として、「あー」と声を伸ばす練習がおすすめです。
力を入れすぎず、気持ちよく息を流しながら、声をまっすぐ前に出すようにします。
無理に大きな声を出そうとせず、自分が出しやすい高さでゆっくりと伸ばしましょう。
声が少しかすれても大丈夫です。
毎日くり返すことで、声帯の動きがなめらかになり、少しずつしっかりした声に変わっていきます。
短い時間でも続けることが大切です。
自分の声の響きを感じながら、楽しんで取り組んでみましょう。
④ 短い文章をゆっくり朗読する
声を元気にするためには、短い文章をゆっくり朗読する練習も効果的です。
新聞の記事や好きな本の一文などを選び、落ち着いて、一つ一つの言葉をはっきり声に出して読みましょう。
急いで読む必要はありません。
息をたっぷり使いながら、ていねいに言葉を届ける気持ちで声を出すことが大切です。
この練習を続けると、息の流れや声の響きが整い、自然と声が聞き取りやすくなっていきます。
声に自信を持つきっかけにもなるので、毎日の習慣にしてみましょう。
⑤ 歌で楽しく声を出す(童謡・演歌などなじみのある曲で)
声を楽しく育てる方法の一つに、歌を歌う練習があります。
特になじみのある童謡や演歌など、知っている曲を使うと安心して声を出すことができます。
歌うときは、無理に大きな声を出そうとせず、心地よく声を流すことを意識しましょう。
好きな歌を口ずさむだけでも、呼吸や声帯の動きが自然に鍛えられます。
また、歌詞をしっかり声に乗せることで、言葉をはっきり伝える力も育ちます。
毎日少しずつ、楽しみながら歌うことが、声を元気にする大きな力になります。
自宅でできるボイストレーニングのコツ
毎日5分でも続ける
声を元気に育てるためには、毎日少しずつ練習を続けることがとても大切です。
たとえ5分だけでも、毎日声を出す時間を作ることで、声の筋肉が少しずつ強くなっていきます。
長い時間がんばる必要はありません。
短い時間でも、こつこつ積み重ねることが大きな力になります。
今日は短くてもいい、という気持ちで、楽しく声を出すことを心がけましょう。
毎日続けるうちに、自然と声が出しやすくなり、自信も生まれてきます。
鏡を見て姿勢チェック
声を出すときは、良い姿勢を保つことがとても大切です。
自分ではまっすぐ立っているつもりでも、気がつかないうちに背中が丸くなっていることがあります。
そこで、鏡を見ながら姿勢をチェックする習慣をつけましょう。
頭のてっぺんが空に向かって引っぱられるような気持ちで、背筋をやさしく伸ばします。
肩の力を抜き、自然に立ったり座ったりできていればOKです。
鏡を使うと、自分の体のクセにも気づきやすくなり、正しい姿勢が身につきやすくなります。
喉が痛い時は無理をしない
ボイストレーニングをしていると、時々喉に違和感を感じることがあります。
もし喉が痛いときは、無理に声を出そうとせず、すぐに練習を休みましょう。
痛みをがまんして声を出し続けると、喉を傷めてしまい、声が出にくくなることがあります。
声も体の一部なので、疲れたときにはしっかり休ませることが大切です。
痛みがなくなってから、またゆっくりと練習を始めれば大丈夫です。
自分の体の声に耳をかたむけながら、やさしく声を育てていきましょう。
家族と一緒にやると楽しい
ボイストレーニングは、一人でやるのも良いですが、家族と一緒にやるともっと楽しくなります。
みんなで声を出すと、自然と笑顔が増え、練習も続けやすくなります。
声を出すことは、体にも心にも良い影響を与えてくれます。
歌を歌ったり、簡単な文章を読んだりしながら、家族と声を合わせる時間を作りましょう。
楽しい気持ちで声を出すと、喉にも負担がかかりにくく、より元気な声が育ちます。
毎日の小さな楽しみとして、声のトレーニングを取り入れてみてください。
まとめ
高齢者の方にとって、声が小さくなるのは自然な変化ですが、あきらめる必要はありません。
正しいボイストレーニングを取り入れることで、息の使い方や声帯の動きが改善され、少しずつ声の力を取り戻すことができます。
毎日の小さな積み重ねが、自信を持って話せる元気な声につながります。
無理なく、楽しみながら続けることが、声を育てるいちばんの近道です。
これからも自分らしい声を大切に育てていきましょう。
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そして、あなたの声が美しく、または力強く変化するかどうかを、ぜひお試しください。
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