最近、歌っていると裏声が出にくい。
以前は出せていた高い声がかすれる。
カラオケで裏声に切り替えようとしても、喉に力が入って地声のまま押してしまう。

60代になられると、このような悩みを感じる方は少なくありません。

60代の方が歌の裏声を出しにくくなる原因は、年齢だけで決まるものではありません。
長年の声の使い方の癖や、声の土台である呼吸の筋肉の弱りによって、声が不安定になっていることがあります。

裏声は、喉だけで無理に出すものではありません。
息の流れに喉が自然に反応することで、軽く出しやすくなります。

この記事では、60代の方が歌の裏声を出しにくくなる原因と、無理なく裏声を出すために見直したい発声法について解説します。

60代で歌の裏声が出ない原因は年齢だけではありません

60代の方が歌の裏声を出しにくくなると、「もう年齢だから仕方ないのかな」と感じる方も多いと思います。

しかし、裏声が出ない原因は年齢だけで決まるものではありません。
長年の声の使い方の癖や、声の土台である呼吸の筋肉の弱りによって、声が不安定になっていることがあります。

まずは、裏声が出ない状態を「老化だから仕方ない」と決めつけず、体の使い方の変化として見ていくことが大切です。
以下で詳しく解説します。

裏声が出ない悩みは「老化」だけで決まるものではない

60代の方が裏声を出しにくくなっても、それがすべて老化によるものとは限りません。

たしかに、年齢を重ねると筋肉量や体力は少しずつ変化します。声を出す筋肉も体の一部なので、若い頃とまったく同じ状態ではありません。

ただし、歌で裏声が出にくくなる原因は、年齢そのものよりも、声の使い方の偏りにあることが多いです。

たとえば、普段あまり声を出さない生活が続くと、声を出す筋肉は動きにくくなります。高い声を出す機会が少なければ、裏声に切り替える働きも使われにくくなります。

筋肉は、よく使えば働きやすくなり、使わなければ眠ったような状態になります。これは声の筋肉も同じです。

つまり、60代の方が裏声を出しにくくなるのは、「声が完全に衰えた」というより、今まであまり使ってこなかった働きが動きにくくなっている可能性があります。

だからこそ、正しい順番で声を動かしていけば、裏声の感覚を取り戻せる余地があります。

60代では長年の声の使い方の癖が表れやすい

60代になられると、長年続けてきた声の使い方の癖が歌に表れやすくなります。

日常会話では、声の出し方を深く意識することはあまりありません。話しやすい高さ、出しやすい音量、慣れた声の出し方で話すことがほとんどです。

その状態が長く続くと、声の使い方が少しずつ固定されていきます。

特に歌では、会話よりも広い音域を使います。低い音から高い音まで動き、長く息を使い、音程も保つ必要があります。

そのため、普段の会話では問題がなくても、歌になると急に声の出しにくさを感じることがあります。

裏声が出ない方の場合、高い音を出そうとしたときに、裏声へ切り替わらず、地声のまま押してしまうことがあります。すると喉に力が入り、声がかすれたり、詰まったり、途中で苦しくなったりします。

これは、裏声の才能がないからではありません。
地声で押す癖が強くなり、裏声に切り替える働きが使われにくくなっている状態です。

この癖を整えるには、喉だけを頑張らせるのではなく、まず声の出し方全体を見直す必要があります。

裏声は呼吸も一緒に使うと出しやすくなる

裏声は、喉だけで出そうとするよりも、呼吸も一緒に使うと出しやすくなります。

声は、息が流れ、その息に反応して声帯が振動し、響きとして整うことで生まれます。
裏声も同じで、喉だけを操作して出すものではありません。

息の流れが弱かったり不安定だったりすると、喉は声を出すために余計に頑張ろうとします。すると、裏声に必要な軽い動きがしにくくなります。

特に60代の方は、声の土台である呼吸の筋肉が弱くなっていることがあります。呼吸が浅くなると、歌の途中で息が足りなくなり、喉だけで高い声を出そうとしやすくなります。

その結果、裏声に切り替えたい場面でも、喉に力が入り、地声のまま押してしまうことがあります。

裏声を出しやすくするには、まず息が止まらずに流れていることが大切です。
そのうえで、喉がその息に自然に反応できる状態を作っていきます。

小谷メソッドでは、声を喉だけの問題として見ません。
呼吸と喉が一緒に働くことで、無理の少ない声が生まれると考えます。

裏声が出ないときも、喉だけを鍛え込むのではなく、呼吸も一緒に使える状態を取り戻すことが大切です。

60代の方が裏声を出しにくいと感じても、すぐに年齢だけが原因だと決めつける必要はありません。
呼吸と喉の使い方を整えることで、裏声が出しやすくなる可能性があります。

声の変化を年齢だけで判断せず、声の使い方や発声器官の働きから考えたい方は、こちらの記事も参考になります。声の老化の真実

 

裏声が出にくくなる主な原因

60代の方が歌の裏声を出しにくくなる背景には、いくつかの原因があります。

多くの場合、原因は一つだけではありません。
呼吸の浅さ、地声で押す癖、裏声を使う機会の減少、喉の力みなどが重なって、裏声に切り替わりにくくなります。

ここでは、60代の方に多い原因を順番に見ていきます。

呼吸の筋肉が弱り、息の流れが不安定になっている

裏声が出にくくなる原因の一つは、声の土台である呼吸の筋肉が弱り、息の流れが不安定になっていることです。

声は、息が流れ、その息に喉が反応することで生まれます。
裏声も同じです。喉だけで作るものではなく、呼吸も一緒に使うことで出しやすくなります。

しかし、60代になられると、普段の生活の中でお腹まわりや背中まわりの筋肉を大きく使う機会が少なくなりやすいです。すると、呼吸が浅くなり、歌う時に必要な息の流れが安定しにくくなります。

息の流れが不安定になると、喉はその不安定さを補おうとして力みやすくなります。
その結果、裏声に必要な軽い動きがしにくくなり、声がかすれたり、息だけが抜けたりします。

特に、歌の高い部分で急に苦しくなる方は、裏声そのものの問題だけでなく、呼吸の筋肉が十分に働いていない可能性があります。

地声で高音を押す癖がついている

裏声が出にくい方は、高い音を地声のまま押して出そうとしていることがあります。

歌では、低い音から高い音へ上がる時に、声の使い方を切り替える必要があります。
しかし、地声の感覚のまま高い音まで上がろうとすると、喉に力が入りやすくなります。

若い頃は勢いで出せていた高音でも、60代になられると同じ出し方では苦しく感じることがあります。
これは、声が出なくなったというより、今の体に対して、以前の出し方が合わなくなっている状態です。

地声で高音を押す癖が強いと、裏声に切り替わる前に喉に余計な力が入りやすくなります。
そのため、裏声を出そうとしても、声がひっくり返らない、かすれる、詰まる、という状態が起きます。

裏声を出すには、地声を強くするだけでは不十分です。
高い音に向かう時に、喉を押し上げるのではなく、呼吸も一緒に使いながら声の出し方を軽くしていく必要があります。

裏声を使う機会が減り、切り替える働きが眠っている

裏声が出ない原因として、裏声を使う機会が減っていることも大きいです。

日常会話では、裏声を使う場面はあまり多くありません。
普段の会話は、出しやすい高さの地声で済むことがほとんどです。

その状態が長く続くと、裏声に切り替える働きが使われにくくなります。
筋肉は、よく使う動きは反応しやすくなり、使わない動きは反応しにくくなります。

これは、裏声も同じです。

昔は自然に出ていた裏声でも、長い間使っていなければ、すぐに反応しにくくなることがあります。
60代の方が裏声を出しにくくなった場合、声そのものが失われたのではなく、裏声に切り替える働きが眠っている状態の方もいます。

この場合、いきなり大きな裏声を出そうとするより、小さく軽い声から少しずつ反応を取り戻す方が安全です。

喉に力が入り、声帯が軽く動きにくくなっている

裏声が出にくい時は、喉に力が入りすぎていることがあります。

裏声は、地声よりも軽い感覚で出す必要があります。
ところが、出ない声を無理に出そうとすると、喉に力が入り、声帯が軽く動きにくくなります。

特に、「高い声を出さなければ」と思うほど、首やあご、肩に力が入りやすくなります。
その力みが強くなると、息の流れも止まりやすくなり、裏声はさらに出しにくくなります。

この時に大切なのは、喉を無理に開こうとすることではありません。
喉だけを直接動かそうとすると、かえって余計な力が入りやすくなります。

まずは、息を止めずに声を出すこと。
そして、小さい声でよいので、喉に余計な力が入らない範囲で裏声の感覚を探すことが大切です。

地声から裏声へ切り替える感覚が分かりにくくなっている

裏声が出にくい方は、地声から裏声へ切り替える感覚が分かりにくくなっていることがあります。

小谷メソッドでは、声を大きく地声と裏声の二つで考えます。
大切なのは、この二つを無理に混ぜようとすることではなく、地声から裏声へ自然に移れる状態を作ることです。

地声と裏声の切り替えがうまくいかないと、高い音で声が詰まったり、急にかすれたりします。
また、裏声に切り替える前に地声で押してしまうため、喉が疲れやすくなります。

この切り替えの感覚は、力で作るものではありません。
呼吸が安定し、喉の余計な力みが少なくなることで、少しずつ感じやすくなります。

そのため、裏声が出ない時ほど、いきなり歌の高い部分を練習するのではなく、短い音で地声と裏声の違いを確認することが大切です。

60代の方が裏声を出しにくくなる原因は、単純に「喉が弱いから」ではありません。
呼吸の筋肉の弱り、地声で押す癖、裏声を使う機会の減少、喉の力み、切り替え感覚の鈍さが重なって起きることが多いです。

歌う時に喉へ力が入りやすい方は、裏声だけでなく発声全体の力みも関係している可能性があります。喉に力が入る原因については、こちらの記事で詳しく解説しています。
60代の方が歌うと力む原因とは?喉に力が入る理由と改善の考え方

 

60代の方が裏声を出そうとしてやりがちな間違い

裏声が出にくくなると、多くの方は「もっと強く出そう」「喉を鍛えよう」と考えます。

しかし、裏声は力で押し出すほど出しにくくなります。
特に60代の方は、無理に大きな声を出すよりも、まず小さく軽い声で感覚を取り戻すことが大切です。

ここでは、裏声が出ない時に避けたい練習や考え方を解説します。

大きな声で無理に裏声を出そうとする

裏声が出ない時に、大きな声で無理に出そうとするのは避けた方がよいです。

裏声は、地声のように強く押して出す声ではありません。
軽い息の流れに、喉が自然に反応して出る声です。

ところが、裏声が出ないからといって大きな声で何度も出そうとすると、喉に力が入りやすくなります。
喉に力が入ると、裏声に必要な軽い動きがしにくくなり、かえって声がかすれたり、詰まったりします。

特にカラオケでは、伴奏の音量に負けないように声を大きく出そうとしがちです。
しかし、裏声が出にくい時に大きな音量で練習すると、地声で高音を押す癖が強くなりやすいです。

最初は、小さい声で十分です。
人に聞かせる声ではなく、自分の喉に余計な力が入らない範囲で、軽く音を出すことから始める方が安全です。

喉だけを鍛えようとする

裏声が出ない時に、喉だけを鍛えようとするのも注意が必要です。

声は喉だけで作るものではありません。
息が流れ、その息に喉が反応して、声として出てきます。

そのため、裏声が出ないからといって、喉だけを強くしようとしても根本的な改善につながりにくいです。
むしろ、喉に意識が集まりすぎることで、余計な力が入りやすくなります。

たとえば、喉を無理に開こうとしたり、声帯を閉じようと意識しすぎたりすると、自然な動きが妨げられることがあります。

大切なのは、喉を単独で動かそうとすることではありません。
呼吸も一緒に使いながら、息に喉が自然に反応する状態を作ることです。

裏声を取り戻すためには、喉を鍛え込むよりも、呼吸と喉を一緒に動かす練習が必要です。

高い声を出せば裏声になると思ってしまう

高い声を出せば、そのまま裏声になると思ってしまう方もいます。

しかし、高い声と裏声は同じではありません。
高い音を地声のまま押して出している場合、それは裏声ではなく、地声で無理をしている状態です。

この状態では、音は高くなっていても、喉にはかなり負担がかかります。
そのまま練習を続けると、声がかすれたり、喉が疲れたり、高音になるほど苦しくなったりします。

裏声は、音の高さだけで決まるものではありません。
地声とは違う軽い声の使い方に切り替わることで出しやすくなります。

そのため、「高い音を出す練習」だけではなく、「軽い声に切り替える練習」が必要です。

最初から高い音を狙う必要はありません。
出しやすい高さで、小さく軽い声を出し、地声とは違う感覚を確認することが大切です。

うまく出ない状態で何度も強く練習してしまう

裏声がうまく出ない状態で、何度も強く練習するのは避けた方がよいです。

声の練習は、回数を重ねればよいというものではありません。
間違った出し方のまま何度も練習すると、その出し方が体に残りやすくなります。

たとえば、喉に力を入れて裏声を出そうとする練習を繰り返すと、裏声を出そうとするたびに喉に余計な力が入る癖がつきやすくなります。

これは、上達ではなく、苦しい出し方を覚えてしまっている状態です。

60代の方のボイストレーニングでは、強い負荷をかけるよりも、短時間でこまめに練習する方が向いています。
一回の練習で無理に出そうとするのではなく、軽く出せる範囲を少しずつ増やしていくことが大切です。

裏声が出ない日は、無理に続けなくても大丈夫です。
小さなハミングや軽い息の練習に戻し、喉に余計な力が入らない状態を作ることを優先します。

裏声を出そうとしてうまくいかない時ほど、強く出す練習から一度離れることが大切です。
大きな声、喉だけの操作、高い音へのこだわり、強い反復は、裏声をさらに出しにくくする原因になります。

60代の方が裏声を取り戻すには、力で押すよりも、小さく軽い声から、呼吸と喉が一緒に働く感覚を育てることが大切です。

高い声を地声で押してしまい、喉が痛くなりやすい方は、張り上げの癖も見直す必要があります。詳しくはこちらの記事で解説しています。
60代が歌で張り上げて喉が痛くなる原因と改善法|無理なく歌う発声法

 

 

無理なく裏声を出すために見直したい発声法

60代の方が裏声を出しにくい時は、喉だけを頑張らせるのではなく、発声の順番を見直すことが大切です。

裏声は、無理に高い声を出そうとして作るものではありません。
まず息の流れを整え、その息に喉が自然に反応できる状態を作ることで、軽く出しやすくなります。

ここでは、無理なく裏声を出すために見直したい発声法を解説します。

まず丹田を意識して息の流れを整える

裏声を出しやすくするためには、まず丹田を意識して息の流れを整えることが大切です。

丹田とは、おへその少し下あたりを指す考え方です。
実際に丹田という器官があるわけではありませんが、呼吸や体の中心を意識する目印として使います。

60代の方が裏声を出しにくい場合、歌う時に呼吸が浅くなっていることがあります。
呼吸が浅いと、息の流れが不安定になり、喉だけで声を出そうとしやすくなります。

その状態で裏声を出そうとすると、喉に余計な力が入りやすくなります。
すると、声がかすれたり、息だけが抜けたり、地声のまま高音を押してしまったりします。

丹田を意識すると、お腹の深いところの筋肉が働きやすくなります。
その働きによって、息が下から自然に流れやすくなり、喉がその息に反応しやすい状態になります。

ここで大切なのは、息を強く押し出すことではありません。
お腹を固めたり、力んだりする必要もありません。

丹田を軽く意識しながら、息を止めずにゆっくり吐く。
その上に声を軽く乗せていく。

この順番を作ることで、裏声を喉だけで探す状態から抜け出しやすくなります。

小さい声から裏声の感覚を取り戻す

裏声が出にくい時は、大きな声ではなく、小さい声から始めることが大切です。

最初からしっかりした裏声を出そうとすると、喉に余計な力が入りやすくなります。
特に「ちゃんと出さなければ」と思うほど、声は重くなり、裏声に切り替わりにくくなります。

裏声の練習では、まず小さくて頼りない声でも構いません。
かすかに出るくらいの軽い声から始めます。

大切なのは、音量ではなく、喉に余計な力が入らないことです。
小さい声であっても、息が止まらず、喉に強い負担がなければ、裏声の感覚を取り戻す練習になります。

たとえば、ため息に近い軽い声で「ほー」と出してみます。
高い音を狙うよりも、出しやすい高さで軽く出すことを優先します。

裏声は、強く出せたから正解ではありません。
まずは、喉に余計な力を入れずに、軽く声が出る感覚を思い出すことが大切です。

小さい裏声を短く出し、少し休む。
また短く出し、また休む。

このように、短時間でこまめに繰り返す方が、60代の方には向いています。

ハミングで喉に力を入れず声を乗せる

裏声を出しやすくする練習として、ハミングも有効です。

ハミングは、口を閉じたまま「んー」と軽く声を出す練習です。
大きな声を出す必要がないため、喉に余計な力が入りにくく、声の感覚を確認しやすい練習です。

裏声が出ない方は、いきなり「あー」と声を出すと、喉に力が入りやすいことがあります。
その場合、まずハミングで軽く音を出す方が、息と声のつながりを感じやすくなります。

やり方は簡単です。

口を軽く閉じて、丹田を意識しながら息を止めずに「んー」と出します。
音は小さくて構いません。
鼻の奥や顔の前のあたりに、軽く響くような感覚があれば十分です。

ただし、響きを無理に作ろうとする必要はありません。
鼻に響かせよう、頭に響かせようと意識しすぎると、かえって喉や顔まわりに余計な力が入りやすくなります。

ハミングの目的は、響きを無理に作ることではありません。
息が止まらず、喉に余計な力を入れずに、声を軽く出すことです。

この感覚が少し分かってきたら、ハミングから軽い裏声へ移ります。
「んー」から「ほー」へ、力を入れずに変えていくような感覚です。

この流れを使うと、喉だけで裏声を出そうとするより、軽い声に入りやすくなります。

地声と裏声を無理につなげようとしない

裏声が出にくい時に、地声と裏声を無理につなげようとする必要はありません。

多くの方は、地声から裏声へなめらかに切り替えたいと思います。
もちろん、最終的には地声と裏声が自然につながる状態を目指します。

しかし、裏声が出にくい段階で、無理につなげようとすると、かえって喉に余計な力が入りやすくなります。

地声と裏声には、それぞれ違う働きがあります。
地声は力強く出しやすい声で、裏声は軽く高い音を出しやすい声です。

この二つをいきなり混ぜようとすると、地声の力強さを残したまま高音へ上がろうとしてしまいます。
その結果、裏声に切り替わる前に喉に余計な力が入り、声がかすれたり詰まったりします。

まずは、地声と裏声を分けて確認することが大切です。

低めの出しやすい地声を短く出す。
次に、別の声として軽い裏声を小さく出す。

最初は、つながっていなくても構いません。
むしろ、地声と裏声の違いをはっきり感じることが大切です。

その違いが分かってくると、少しずつ切り替えの感覚が育っていきます。
そこから、無理のない範囲で地声と裏声の間を行き来していきます。

裏声を無理なく出すためには、いきなり歌の中で完成させようとしないことです。
まず丹田を意識して息の流れを整え、小さい声やハミングで軽い声の感覚を取り戻し、地声と裏声の違いを確認する。

この順番で練習すると、喉だけに頼らず、呼吸も一緒に使った裏声へ近づきやすくなります。

丹田を意識した呼吸についてさらに詳しく知りたい方は、丹田がボイストレーニングで重要とされる理由をこちらで解説しています。
なぜ丹田はボイストレーニングで重要なのか?

 

 

裏声を取り戻すために大切な練習の順番

60代の方が裏声を取り戻していくには、いきなり歌の高い部分を練習するよりも、順番を守ることが大切です。

まず姿勢を整え、息を止めずに吐く感覚を作り、その上で軽い裏声を短く出していきます。
この順番を飛ばすと、喉に余計な力が入りやすくなり、裏声がさらに出しにくくなることがあります。

ここでは、無理なく裏声を取り戻すための練習の順番を解説します。

姿勢を整えて浅い呼吸を防ぐ

裏声の練習を始める前に、まず姿勢を整えることが大切です。

姿勢が崩れていると、呼吸が浅くなりやすくなります。
背中が丸まり、胸やお腹まわりが縮こまると、息が十分に流れにくくなります。

その状態で裏声を出そうとすると、呼吸ではなく喉だけで声を出そうとしやすくなります。
すると、喉に余計な力が入り、裏声に必要な軽い声の動きが出にくくなります。

姿勢を整えるといっても、胸を大きく張る必要はありません。
背筋を無理に反らせる必要もありません。

まず、椅子に座っている場合は、足の裏を床につけます。
頭が上に軽く引き上げられるような感覚で、背中を自然に起こします。

この時、肩に力を入れないことが大切です。
肩を上げて頑張るのではなく、体の中心がまっすぐになるように整えます。

姿勢が整うと、息が入りやすくなり、吐く息も流れやすくなります。
裏声の練習は、この状態を作ってから始める方が安全です。

丹田を意識して息をゆっくり吐く

姿勢を整えたら、次に丹田を意識して息をゆっくり吐きます。

裏声が出にくい時は、喉から先に練習したくなります。
しかし、最初に整えたいのは喉ではなく、息の流れです。

丹田は、おへその少し下あたりを意識するための目印です。
そこを軽く意識しながら、息を止めずにゆっくり吐いていきます。

この時、息を強く押し出す必要はありません。
お腹を固めたり、力んだりする必要もありません。

大切なのは、息が途中で止まらず、細く長く流れていることです。

息を吐く時に、喉や肩に力が入っていないかを確認します。
もし肩が上がったり、首まわりに力が入ったりする場合は、声を出す前に息だけの練習に戻します。

60代の方の場合、呼吸の筋肉があまり使われず、浅い呼吸が習慣になっていることがあります。
そのまま声を出そうとすると、喉に余計な力が入りやすくなります。

だからこそ、まず丹田を意識して息を吐く練習が必要です。
息の流れが整うと、喉がその息に自然に反応しやすくなります。

軽い裏声を短時間で反復する

息の流れが整ってきたら、軽い裏声を短時間で出していきます。

ここで大切なのは、長く出そうとしないことです。
最初から長く伸ばしたり、大きな声を出したりすると、喉に余計な力が入りやすくなります。

まずは、短く「ほー」と出すくらいで十分です。
音量は小さくて構いません。

裏声の練習では、きれいな声を出そうとしすぎないことも大切です。
最初から完成された裏声を目指すと、喉を操作しようとしてしまいます。

目的は、裏声を立派に鳴らすことではありません。
眠っていた裏声の働きを、少しずつ目覚めさせることです。

一回出したら、少し休みます。
また短く出して、また休みます。

このように、短い練習をこまめに繰り返す方が、60代の方には向いています。
長時間まとめて練習するよりも、喉に余計な力が入らない範囲で、毎日少しずつ声を使う方が効果的です。

裏声がかすれても、無理に押し直す必要はありません。
息が止まっていないか、喉に余計な力が入っていないかを確認して、もう一度小さい声に戻します。

歌に戻す前に短いフレーズで確認する

軽い裏声が少し出るようになってきたら、いきなり一曲を歌うのではなく、短いフレーズで確認します。

歌になると、音程、リズム、歌詞、音量など、意識することが一気に増えます。
そのため、練習では出せた裏声でも、歌の中では地声で押す癖が戻りやすくなります。

まずは、歌の中の高い部分だけを短く取り出します。
その部分を、大きな声ではなく、小さめの声で確認します。

この時も、裏声を無理につなげようとしなくて大丈夫です。
まずは、地声で押さずに、軽い声へ切り替える感覚を確認します。

うまくいかない場合は、すぐに曲へ戻らず、ハミングや短い裏声の練習に戻ります。
歌の中で苦しいまま何度も繰り返すと、喉に余計な力が入る癖が強くなりやすいからです。

練習の流れは、姿勢、丹田を意識した呼吸、軽い裏声、短いフレーズの順番です。
この順番を守ることで、喉だけに頼らず、呼吸も一緒に使った裏声に近づきやすくなります。

60代の方が裏声を取り戻すには、強く出すことよりも、正しい順番で小さく反復することが大切です。
無理に高い声を出そうとせず、呼吸と喉が一緒に働く感覚を少しずつ育てていきましょう。

裏声を取り戻す練習を続けるうえで、「60代からボイストレーニングを始めても効果があるのか」と不安な方は、こちらの記事も参考になります。
60代からボイストレーニング始めても効果があるのか?年齢を重ねても輝く歌声を手に入れる方法

 

 

まとめ:裏声は喉だけでなく呼吸と喉の連動で取り戻す

60代の方が歌で裏声を出しにくくなる原因は、年齢だけで決まるものではありません。

長年の声の使い方の癖、声の土台である呼吸の筋肉の弱り、地声で高音を押す癖、裏声を使う機会の減少などが重なることで、裏声に切り替える働きが弱くなっていることがあります。

裏声が出ない時に大切なのは、喉だけを鍛えようとしないことです。

声は、息が流れ、その息に喉が自然に反応することで生まれます。
裏声も同じです。喉だけで無理に作ろうとすると、喉に余計な力が入り、かえって出しにくくなることがあります。

まずは姿勢を整え、丹田を意識して息の流れを作り、小さい裏声やハミングから始めていくことが大切です。
大きな声で無理に出すのではなく、喉に余計な力が入らない範囲で、短時間ずつこまめに練習していきましょう。

裏声は、強く押し出して作るものではありません。
呼吸も一緒に使いながら、眠っていた裏声の働きを少しずつ目覚めさせていくものです。

「昔のように裏声が出ない」と感じても、すぐに年齢だけが原因だと決めつける必要はありません。
声の使い方を見直し、呼吸と喉が一緒に働く状態を取り戻していけば、無理なく裏声を出しやすくなる可能性があります。

まずは、大きな声で無理に出そうとせず、丹田を意識した呼吸、小さな裏声、軽いハミングから始めてみてください。
裏声は一気に取り戻すものではなく、眠っていた働きを少しずつ目覚めさせていくものです。

焦らず、喉に余計な力が入らない範囲で、短時間ずつ続けていきましょう。

 

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