歌っていると、急に「バリバリ」としたノイズが声にまざってしまう…。
そんな経験に悩んでいませんか?
一生懸命歌っているのに声が汚れて聞こえると、自信をなくしてしまうこともありますよね。
実はこの「バリバリ音」には、きちんとした原因があり、正しい方法でトレーニングすれば改善できます。
この記事では、歌っているときに声にノイズが入る原因と、その解決方法についてわかりやすく解説します。
きれいな歌声を取り戻したいあなたに、ぜひ読んでいただきたい内容です。
歌っていると声にバリバリとノイズが入る原因
生徒さんからの相談:「歌うと声にバリバリとノイズが入る」
歌のレッスンをしていると、実にさまざまな悩みを抱えた生徒さんに出会います。
中でも特に印象的だったのが、「歌っていると声にバリバリとノイズが入ってしまう」というご相談でした。
ある日のレッスンで、生徒さんが、少し不安そうな表情でこう話してくれました。
「先生、最近歌っていると、自分の声に“バリバリ”っていう変なノイズが混じるんです。今までこんなことはなかったのに、どうしても直らなくて……」
最初は「気のせいかな?」と思っていたそうですが、ご自身でスマートフォンに録音してみたところ、たしかに音源の中にザラついたノイズが混じっていることがはっきり分かったそうです。
実際にレッスンで歌声を聴かせていただくと、確かに声の中に“バリバリ”とした雑音が混じっていました。
特に高い音域になればなるほど、そのノイズがより強く現れるように感じられました。
この“声のノイズ”は、歌うことを楽しみたい方にとって、とても大きなストレスや不安の原因になります。
思い切り歌いたいのに、自分の声に自信が持てなくなる。
「自分の喉に何か問題があるのでは」と心配になり、歌うこと自体が億劫になる方も少なくありません。
こうした悩みに寄り添いながら、私は「なぜ声にノイズが入るのか?」「どうすれば改善できるのか?」という発声の根本について、生徒さんと一緒に丁寧に見直していくことにしました。
その場で行ったアドバイスと変化
生徒さんの歌声を実際に聴かせていただいたとき、最初に感じたのは「声帯が必要以上に強く閉じているのではないか」ということでした。
歌い出しの時点で、声そのものがギュッと詰まったような印象があり、息の流れがスムーズに声帯を通り抜けていないのが伝わってきました。
私はすぐに「おそらく声帯が閉じ過ぎていることで、ヒダ同士の摩擦が大きくなり、バリバリというノイズが生まれているのでは」と仮説を立てました。
このとき、「喉でしっかり声を出そう」と意識しすぎると、どうしても声帯を強く閉じてしまいがちです。
そこで、生徒さんに「一度、力を抜いて“息漏れの声”で歌ってみましょう」とお伝えしました。
この“息漏れの声”というのは、声帯の閉じ方をゆるめて、息がスーッと抜けるような柔らかい発声です。
実際にやっていただくと、最初は少し戸惑いながらも、生徒さんの声の質が明らかに変化し始めました。
歌い始めてすぐに、「あれ?さっきまであったノイズがほとんど消えてる!」とご本人も驚いた表情になりました。
私の耳にも、先ほどまでのザラザラした“バリバリ音”がすっかり消え、声がなめらかに響くようになったのがはっきり分かりました。
声帯の閉じ方ひとつで、ここまで音色が変わるのか、と生徒さん自身も実感された様子で、歌うことへの不安が和らいだようでした。
「無理に強い声を出そうとせず、まずは息が自然に流れる感覚をつかむことが大切なんだ」と、実際の体験を通して腑に落ちていただけたのだと思います。
ノイズの正体:声帯の過緊張が引き起こす現象
このことからも分かる通り、歌っているときに声に「バリバリ」とノイズが入るのは、表面的な現象ではなく、発声の根本に問題があります。
声帯は喉の中にある小さなヒダのような器官で、本来はやわらかく閉じて、息に合わせてしなやかに振動します。
しかし、声帯が強くぎゅっと閉じ過ぎると、ヒダ同士の摩擦が大きくなり、振動がスムーズにいかなくなります。
このとき、声には「バリバリ」「ザラザラ」といったノイズが入りやすくなります。
さらに、閉じすぎた声帯に対して無理に強い息をぶつけてしまうと、音がますます荒れてしまいます。
喉全体や首・肩周りまで力が入りすぎると、声帯だけでなく、身体全体が緊張して、きれいな声を生み出すことが難しくなります。
本質的な原因:喉主導の発声と身体のアンバランス
歌声にノイズが入ってしまう本質的な原因は、単なる発声の「クセ」や「テクニック不足」ではありません。
大きなポイントは、「喉だけで声をコントロールしようとする意識」にあります。
多くの人が「もっと大きな声を出さなきゃ」「しっかり通る声を響かせたい」と思うあまり、無意識のうちに喉や首まわりに余計な力を入れてしまうのです。
特に、カラオケや舞台など人前で歌うシーンになると、「声を遠くまで飛ばしたい」「はっきり聞こえるようにしたい」という気持ちが強くなりがちです。
その気持ち自体はとても自然なことですが、気付かぬうちに「喉をギュッと締める」「首筋に力を入れる」といった形で現れてしまいます。
喉に力が入ると、声帯が本来持っているしなやかさや柔軟性を失い、ヒダ同士が強く押し合い、必要以上に硬く閉じてしまいます。
この状態になると、息の流れと声帯の振動がうまくかみ合わず、摩擦音やノイズが発生しやすくなるのです。
また、発声のときに「身体の使い方」がアンバランスになることも大きな要因です。
本来、安定した発声には「息の流れ」「体幹の支え」「響きの方向」など、全身の協調した使い方が不可欠です。
しかし「喉だけでなんとかしよう」という意識が強いと、息や身体のサポートが疎かになり、喉や声帯だけが過剰に働くことになります。
実際、多くの方が「腹式呼吸」や「体幹を使って支える」と頭では理解していても、緊張したり不安になったりすると、すぐに喉主導の発声に戻ってしまいます。
これは決して「気合が足りない」とか「努力不足」という話ではありません。
むしろ、人間の身体が「緊張したときは、まず喉で音を出そうとする」ようにできているため、無意識にそうなってしまうのです。
根本的な改善には、この「喉主導」から「身体全体で支える」発声へと意識を切り替え、バランスを整えていく必要があります。
歌っていると声にバリバリとノイズが入る問題の解決方法
歌っているときに声に「バリバリ」とノイズが入る。
この問題の本質は、声帯振動のバランスが根本から崩れていることにあります。
声帯は繊細なバランスで動く
声帯は、喉の奥に左右一対で存在する非常に薄いヒダ状の組織です。
長さは約1.5~2cmほど、厚さはわずか数ミリという小ささですが、この小さな組織が私たちの声のすべてを生み出しています。
普段はわずかに開いて空気の通り道になっていますが、声を出そうとした瞬間、声帯はピタッと閉じて、息の流れを受けてしなやかに振動します。
この振動が音の“もと”となり、私たちの声となって外に響いていくのです。
ここで重要なのは、声帯が「ただギュッと閉じればいい」「ただパカッと開けばいい」という単純な動きをしているわけではないという点です。
声帯は息の圧力や身体全体の支え、その時々の筋肉の緊張状態など、さまざまな条件の絶妙なバランスによって、ミリ単位で細かく動いています。
ちょっとした息の強さや姿勢の違い、気持ちの緊張・リラックス状態によっても、声帯は敏感に反応します。
声帯の動きは、まるでピアノの鍵盤を優しく押したり、強く叩いたりするような繊細さです。
「ただ閉じる・開く」という単純なスイッチではなく、常に微調整をしながら“ちょうどいい位置”を探し続けています。
この繊細なバランスが崩れると、途端に声がかすれたり、ノイズが混じったり、思うような音色にならなくなってしまいます。
だからこそ、声帯の本来持つ柔軟性とバランスを守ることが、安定した声・澄んだ声を生み出すうえで何よりも大切なのです。
閉じすぎが生む声のトラブル
声帯は、本来とても柔らかくしなやかに動くものですが、過剰に閉じすぎてしまうと、その繊細な動きが大きく損なわれます。
例えば、「もっと響かせたい」「大きな声を出したい」と思うあまり、喉に無意識に力が入ると、声帯のヒダが強く押し付け合う形になりがちです。
こうなると、筋肉がガチガチに緊張して、声帯本来の柔らかさや伸び縮みする感覚が失われてしまいます。
その結果、声帯が滑らかに振動できず、摩擦音が生じて「バリバリ」「ザラザラ」といったノイズが混じるのです。
また、強く閉じすぎることで息の通り道が狭くなり、必要以上の呼気圧をかけて押し出そうとするため、ますます荒れた音色になったり、喉が疲れやすくなることもよくあります。
「大きな声が出ない」「すぐに喉が疲れる」「声がひっくり返る」といったトラブルも、この声帯振動のバランスの崩れが根本にあることが多いのです。
本当に良い声――よく響き、芯があって、自然に伸びる声――は、声帯が“強すぎず・弱すぎず”、絶妙なバランスで閉じているときにだけ生まれます。
このバランスを見極め、維持することが、安定した歌声・話し声を手に入れるための最も重要なポイントです。
小手先のテクニックに頼らない
歌や発声の悩みに直面したとき、多くの人はまず「すぐできる解決法」を探そうとします。
「この喉の形で発音すればいい」「舌の位置をこうすればノイズが消える」「このワザを使えば高音が出る」といった、小手先のテクニックを真似してみる――これはよくあることです。
ネットや動画、SNSでも“すぐ効く発声法”や“簡単に改善できる裏技”があふれており、「とりあえず試してみよう」と思うのも自然な流れです。
実際にこうした方法で、一時的に声が変わったように感じることもあります。
しかし、これらのテクニックは“表面をなでているだけ”のことがほとんどです。
根本的な原因――声帯そのもののバランスや、身体の使い方、呼吸の質――が変わらないままでは、またすぐに元に戻ったり、他の問題が出てきたりします。
「昨日は出ていた声が今日は出ない」「ある日はノイズが消えても、次の日にはまた現れる」といった“安定しない状態”が続くのも、小手先の技術に頼っているサインです。
本当に声を良くしたい、悩みを根本から解決したいのであれば、一度“テクニック探し”をやめて、声帯本来の機能や、身体全体の協調の仕組みに目を向けることが大切です。
声帯は非常にデリケートな器官で、無理な動かし方や変な力みが加わると、かえって状態が悪化することもあります。
“楽に・自然に・しなやかに”声を出せる状態を作るには、小手先の工夫よりも「土台そのものの見直し」が何より重要です。
つまり、「喉をどう動かすか」「どう響かせるか」以前に、まず声帯が自然に動けるような、正しい呼吸・正しい姿勢・正しい支えを整えること。
そこが整えば、今までの悩みが嘘のように改善していくのです。
土台から見直すことの重要性
声のトラブルを本当に解決したいときに、最も重要なのが“土台”の見直しです。
ここでいう土台とは、声帯だけでなく、身体全体が自然に協調して動くための基礎づくりのことを指します。
たとえば、どんなに喉のテクニックを磨いても、体のどこかに余計な力みや緊張が残っていれば、声帯は本来の柔らかい動きを取り戻せません。
特に、呼吸筋――つまりお腹や背中、肋骨まわりの筋肉――が固まっていると、息の流れ自体が不自然になり、声帯への負担が増えてしまいます。
また、猫背や首の突き出し、反り腰などの悪い姿勢は、声帯を支える体幹の力を十分に活かせず、どうしても喉や肩だけで無理に声を出そうとしてしまいます。
その結果、息は浅くなり、声帯が過度に閉じたり開いたりといったアンバランスな動きを招くことになります。
逆に、身体の力みを取り除き、全体がリラックスして安定した状態であれば、声帯もやわらかくしなやかに動けるようになります。
呼吸筋が柔らかく動き、姿勢が整っていると、息は体幹を通って無理なく流れ、その上に自然な声が乗るようになります。
この“土台”が整うことで、声帯は無理な閉鎖も開放もせず、ちょうどいいバランスで振動できるのです。
表面的な発声のテクニックをどれだけ重ねても、土台が崩れていれば、その場しのぎの改善にしかなりません。
本質的な解決を目指すなら、「土台=身体全体の使い方」から見直し、声帯が自然に働ける環境をつくることが不可欠です。
「息漏れの声」がもたらすリセット効果
今回ご紹介した「息漏れの声で歌う」というアプローチは、見た目には簡単なテクニックのひとつに思われがちです。
しかし実際には、喉や声帯がガチガチに力んでしまっている状態を一度リセットし、過剰な閉鎖をゆるめるための、とても重要な役割を果たしています。
普段から「しっかり声を出そう」「強く閉じよう」と意識するあまり、声帯のヒダは無意識のうちに強く閉じてしまいがちです。
この状態が続くと、声帯の柔らかさやしなやかさが損なわれ、ノイズやひずみ、喉の疲労感などさまざまなトラブルにつながります。
そこで、「息漏れの声」で意識的に声帯の閉鎖をゆるめ、息がスーッと通る状態を作ることで、声帯に余計な力が入っていない“自然な位置”を再確認できます。
これは、たとえるなら“緊張した筋肉を一度ストレッチでゆるめる”ようなもので、声帯本来の動きを思い出すきっかけになります。
また、息漏れの声を出してみることで、自分自身が「喉を締めていた」「力みで振動が妨げられていた」ことに気づきやすくなります。
この「一度ゆるめる→元に戻す」という流れを何度も繰り返すうちに、声帯は次第に過剰な力みから解放され、無理なく、自然に振動できる状態に戻っていきます。
最初は息が漏れて弱い声に感じても、続けていくうちに徐々に声帯のバランスが整い、なめらかな響きと芯のある声が生まれてくるのです。
このプロセスを丁寧に繰り返すことで、「頑張らなくても出る声」「喉に負担をかけずに響く声」という理想的な発声状態が徐々に身についていきます。
声帯本来の働きを取り戻すことが重要
本当に良い声を手に入れるために、もっとも大切なのは「声帯そのものが本来の働きを発揮できているか」を見直すことです。
声帯は“強く閉じすぎても、ゆるく開きすぎても”、どちらでも美しい声や安定した響きは生まれません。
必要なのは、声帯が“強すぎず弱すぎず”、絶妙なバランスでやわらかく閉じて振動している状態です。
このバランスがとれていれば、余計な力みもなく、自然体で芯のある声・のびやかな響き・長時間歌っても疲れない発声が実現します。
逆に、バランスが崩れたままでは、いくら表面的なテクニックを積み重ねても、その場しのぎの改善しか得られません。
多くの人は「こうすれば高音が出る」「このコツでノイズが消える」といったアドバイスやテクニックを求めがちですが、これだけでは根本的な解決にはつながらないのです。
大切なのは、まず「声帯が無理なく自然に動ける条件」を整えることです。
たとえば、呼吸筋や姿勢、身体全体の支えが整っていれば、声帯はそれに呼応してやわらかく、しなやかに動けるようになります。
すると、何か特別な意識や力みを加えなくても、自然と安定した響きが生まれてきます。
この「本来の働きを発揮できているか」という視点を持つことで、日によって声が変わったり、場面によって不安定になることも少なくなっていきます。
最終的には「小手先の技術」から卒業し、「どんなときでも自然体で安定した声が出せる」という、真の意味での“良い声”にたどり着くことができます。
この状態を目指して、日々の発声を“土台”から整えていくことこそ、根本改善への近道です。
まとめ
歌っていると声にバリバリとノイズが入る原因は、声帯のバランスが乱れることにありました。
特に、声帯を閉じすぎたり、開きすぎたりすることが大きな要因となります。
解決するためには、声帯をやわらかく閉じる感覚を身につけ、息の使い方もやさしくコントロールすることが大切です。
しかし、声帯のバランスを整えるには、すぐに結果が出るわけではありません。
毎日の小さな練習の積み重ねが、少しずつ確実に声の変化を生み出していきます。
焦らず、正しい方法でトレーニングを続けることが、きれいで安定した歌声への一番の近道です。
この記事を参考に、まずは自分の声の使い方を見直してみましょう。
長期的な視点でコツコツ取り組むことで、バリバリとしたノイズのない、なめらかな歌声を手に入れることができます。
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そして、あなたの声が美しく、または力強く変化するかどうかを、ぜひお試しください。
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