歌やスピーチ、あるいは日常会話においても「声が出ない」「すぐに喉が疲れる」「思うように響かない」という悩みを抱える人は多いでしょう。

プロの歌手でも、日々の発声練習を欠かさず続けています。

なぜなら、発声は“筋肉の使い方”と“呼吸”が深く関係しており、トレーニングによって明確に進化するからです。

本記事では、発声練習の「本質」と「よくある誤解」、そして効果的なトレーニング法まで、忖度なしで徹底的に解説します。

 

発声の仕組みを理解する【基礎理論編】

発声のメカニズムを正しく知る

私たちが日常的に発する「声」は、決して喉だけの単純な動きで生まれているわけではありません。

声という現象は、全身の筋肉や骨格、呼吸のコントロールなど、多くの要素が複雑に連携した結果として成り立っています。

まず、発声の根本には「呼吸」の働きがあります。

人は息を吸い、そして吐く、この繰り返しによって生命を維持していますが、発声とは「吐く息」が声帯を振動させ、音として外部に現れるプロセスです。

息を吸うときには、横隔膜が下がり、肋骨の間にある肋間筋も広がることで胸郭が拡がり、肺に空気が入ります(吸気筋の働き)。

そして、息を吐くときには腹筋や肋間筋(呼気筋)が収縮し、肺から空気が押し出されます。

このとき、空気は気管を通り、喉にある声帯(左右一対の粘膜ひだ)に到達します。

声帯は“門のように閉じたり開いたり”できる筋肉組織であり、吐く息の圧力が加わることで瞬時に振動します。

この声帯の振動が「原音」となり、これが声の“元”です。

ただし、声帯が発する音だけでは「ブーン」という単調で小さな音にすぎません。

例えるなら、ギターの弦だけを弾いた音が薄っぺらく聞こえるのと同じです。

この原音を、人間らしい豊かな「声」として響かせるためには、「共鳴腔(きょうめいくう)」の働きが不可欠です。

共鳴腔とは、口腔(口の中)、咽頭腔(喉の奥)、さらには鼻腔など、空気の通り道となる広い空間のことを指します。

声帯で生まれた振動音は、これらの空間で増幅され、性質が変化します。

共鳴腔が広く柔軟に使えるほど、声は豊かに、そして遠くまで響きます。

逆に、口を閉じていたり、喉が詰まっていたりすると、声はこもり、聞き取りにくくなります。

この仕組みは楽器にも共通します。

たとえば、クラリネットやサックスなどの管楽器は、「息を吹き込む」「リード(振動体)が震える」「管(共鳴体)で音が増幅する」という流れで音が鳴ります。

人間の発声も、「肺(息を作る場所)→声帯(音の元を作る場所)→共鳴腔(音を響かせる場所)」という3段階の連携で成立しています。

また、ここで重要なのは「息を吸う」「息を止める」「息を吐く」という三段階の動作です。

・まず、息を吸う段階では横隔膜と肋間筋(吸気筋)が主に働きます。

・次に、息を一瞬止める(声を出す準備)のタイミングで、声帯が適切に閉じられます。

・そして、息を吐く段階で腹筋や肋間筋(呼気筋)が働き、声帯を振動させながら空気を送り出します。

この呼吸筋の連携がスムーズであるほど、声は安定し、喉に余計な負担がかかりません。

発声時に姿勢や体幹の使い方が重要とされるのも、全身の筋肉バランスが呼吸と声帯の働きを左右するためです。

また、共鳴腔の使い方には個人差があり、口腔・咽頭腔の“広がり”や“柔軟性”がそのまま声の個性となって現れます。

プロの歌手やナレーターは、口の開け方・舌の位置・喉の奥の広げ方など、共鳴腔のコントロールを鍛えることで豊かな声を生み出しています。

このように、発声は単に「大きな声を出す」だけでなく、全身の筋肉・呼吸・共鳴腔が一体となった“全身運動”であると理解することが、効果的な発声練習の第一歩となります。

発声のしくみを正しく理解し、身体と息の連携を意識したトレーニングを続けることで、「通る声」「疲れない声」「自由に表現できる声」が育ちます。

良い発声=「呼気筋」の活用がポイント

本質的な発声は「呼気筋(腹筋や横隔膜の呼気側の働き)」をしっかり使い、日常会話で自然に使っている筋肉を無理なく“発展”させることです。

逆に、普段使っていない筋肉や間違った力みを加えると喉声や息漏れの声になりやすく、声のコントロールも難しくなります。

 

よくある誤解と発声トラブル【間違いやすいポイント】

「大きな声を出す=喉に力を入れる」ではない

「声を大きく出したい」「遠くまで響かせたい」と思うあまり、喉に力を入れてしまう人は非常に多いです。 しかし、これは発声の現場で最もありがちなミスであり、しかもその場では“やっている感”が得られるため、長年無意識にクセづいてしまうことも少なくありません。

喉に力を入れると、一時的に音は出しやすくなりますが、実は声帯が強く閉じすぎて振動が妨げられ、息の流れが乱れやすくなります。 その結果、声は「締まった音」や「カスレ声」になり、かえって声量が落ちてしまいます。

また、喉の筋肉が過緊張の状態で声を出し続けると、声帯自体も疲弊しやすく、長時間話す・歌うことが苦痛になってしまいます。 ひどい場合はポリープや声帯結節といったトラブルにもつながりかねません。

本来「大きな声」とは、息の力(呼気圧)がうまくコントロールされ、声帯の適度な閉鎖と共鳴腔の広がりが合わさったときに、初めて無理なく生まれます。 スポーツで例えれば、筋力だけでなく体幹の連動やフォームの効率が大切なのと同じです。

もし大きな声を出してすぐに喉が痛くなる、声が割れる・枯れる、といった症状があるなら、「喉で頑張っている証拠」です。 まずは“息を流す感覚”や“体幹の支え”を感じながら、喉の脱力を優先してください。

「腹式呼吸=お腹を膨らませる」ではない

日本のボイストレーニングでは「腹式呼吸」という言葉が浸透しており、レッスン現場でも「お腹を膨らませて吸いましょう」と指導されることが多いです。 ですが実際には、過度にお腹だけを意識して膨らませると、身体全体に余計な緊張が生まれてしまいます。

人間本来の自然な呼吸は、お腹だけでなく「背中側」「脇腹」「骨盤底」など体幹全体がゆったり広がるものです。 特に、横隔膜の動きによって背中側も膨らむ感覚を持てると、身体の前後・左右がバランス良く開き、呼気筋を無理なく使える状態になります。

一方、お腹を「突き出す」意識が強いと、腹筋群が弛緩し、腹圧や体幹の安定が損なわれます。 また、下腹部が不自然に前に出てしまい、腰や背中を反らせてしまう人も多く見かけます。

正しい呼吸法は「体幹全体が広がり、背中に空気が入る感覚」を目指すことです。 横から誰かにそっと抱きしめられるイメージで、息をゆっくり吸ってみてください。 このとき、肩が上がらず、お腹・背中・脇腹すべてが膨らむ感覚があればOKです。

つまり、“腹式呼吸=お腹だけ膨らませる”は誤りであり、「体幹全体の拡張」が正しい発声の土台となります。

「共鳴=鼻腔」ではない

「響きを鼻腔に集めて」と言われることが多いですが、これは部分的には正しいものの、実際に“鼻”だけに集中しすぎると「鼻声」や「詰まった声」になりやすいです。 また、鼻腔はあくまで補助的な共鳴空間であり、主役はあくまで「口腔・咽頭腔」です。

例えば、プロのオペラ歌手やミュージカル俳優の発声は、口の中・喉の奥(咽頭)を大きく広げて、音の“響きの柱”を作ります。 これによって、遠くまで通る豊かな声が実現できます。

鼻腔にだけ意識を置くと、声が前に抜けず、言葉も明瞭に伝わりません。 とくに日本語のような母音言語では、口腔・咽頭腔の共鳴をしっかり意識しないと「こもった声」になりやすいです。

響きの意識は「上唇から眉間にかけてのエリア」「頭蓋骨全体に広がるようなイメージ」を持つと、自然に口腔・咽頭腔を活かした共鳴ができるようになります。

「とにかく練習すれば上達する」ではない

発声の世界で「練習量が全て」という考えは根強いですが、実は“間違った方法”での反復は、むしろ声を悪くする危険もあります。

例えば、毎日1時間、喉声で叫び続けていれば、喉に負担がかかり、どんどん声が出にくくなっていきます。 また、誤った呼吸法やフォームでのトレーニングは、その“悪いクセ”を強化するだけになりかねません。

本当に必要なのは、「正しい体の使い方」「呼気筋の適切な活用」「響きのバランス」を意識して、少しずつ積み重ねることです。

練習の「質」を高めるためには、時に専門家のフィードバックを受けたり、自分の声を録音して客観的に聞き返すことも非常に有効です。

一日10分でも良いので、「正しい方向性」でコツコツと積み重ねる――これこそが声を進化させる一番の近道なのです。

 

発声練習の前にやるべき「準備」と「姿勢」

姿勢の見直し

猫背や反り腰は呼吸を浅くし、呼気筋も使いにくくします。

足裏の重心、骨盤の立て方、背骨の位置などを意識し、「自然体」を心がけましょう。

リラックスの重要性

全身を硬直させては良い発声はできません。

特に首・肩・顎の力を抜くこと。

一度「深呼吸」を数回し、身体全体の余計な力を抜きましょう。

ウォームアップ

急に大きな声を出すのは声帯に大きな負担をかけます。

まずは小さな声やハミングから始めて、徐々に音量や高さを上げていくことが安全かつ効果的です。

 

基本の発声トレーニング【初級編】

呼吸筋トレーニング

ブレスコントロール(呼気筋の強化)

椅子に座り背筋を伸ばしてリラックス

鼻からゆっくり息を吸う(お腹や背中に手を当て、体幹が広がる感覚を意識)

口をすぼめて「フー」と細く長く息を吐く

(10秒、20秒、30秒と持続時間を延ばしていく)

このトレーニングは呼気筋の持久力を鍛え、「息の支え」を作る土台となります。

ピラティス的ブレス

仰向けになり膝を立ててリラックス

息を吸う時に背中側が広がるイメージで

吐く時は肋骨の下を内側に締めるように

この方法で“体幹全体の呼吸”を体感できます。

声帯のウォームアップ

ハミング(鼻歌)

唇を軽く閉じ「んー」と小さな声でハミング

音の“響き”を上唇や頬、眉間付近に集めるイメージ

声帯に無理なく刺激を与え、共鳴腔の使い方も体得できます。

母音のロングトーン

「あ」「い」「う」「え」「お」と一音ずつ、息を無理なく一定に伸ばす

息が尽きるまでではなく、7割程度の息でストップ

音の高さは無理なく出せる範囲で

共鳴腔のトレーニング

口腔・咽頭腔を意識した発声

軽く口を開けて「ま」「な」「は」など子音+母音で発声

口内の空間や舌の位置を意識し、音がこもらないように調整

声が眉間あたりに響くようイメージ

 

発声練習でよくある悩み・トラブルの対策

喉が痛くなる・枯れる

喉にだけ力が入っていないか?呼気筋の使い方を再確認

ウォームアップ不足ではないか?

水分補給や湿度管理も大切

声がこもる・響かない

共鳴腔(口腔・咽頭腔)がしっかり開いているか?

舌や顎の余計な緊張がないか?

呼気の安定と支えをチェック

高音が苦しい・裏声にひっくり返る

高音域こそ、喉ではなく体幹(丹田)から息を支える

ミックスボイスの感覚を少しずつ身につける

焦らず小さな音量から練習す

 

日々のトレーニング継続のコツ

量より質を重視し、短時間でも正しいフォームを心がける

練習内容や調子を記録する

声の違和感や痛みが出た場合は無理をしない

時に専門家(ボイストレーナー)に客観的なフィードバックをもらう

 

まとめ

発声練習は「呼吸」「呼気筋」「共鳴腔」のバランスを見直し、“日常の自然な筋肉の延長線上”で行うことが最も大切です。

よくある誤解を正し、自分の声や身体とじっくり向き合いながら、日々のトレーニングを積み重ねていくことで、必ず声は変わっていきます。

最終的には、「負担なく・響く声」を目指すのが理想。

発声は“生まれつき”ではなく、正しい練習と習慣によって誰でも進化できる技術です。

 

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