声門閉鎖という言葉を聞くと、「声帯をギュッと閉じれば強い声が出るのでは」と思ったことはありませんか。
息漏れやかすれ声をなくそうと、意識的に喉を締めてしまった経験のある方も多いかもしれません。
実は、声門閉鎖は鍛え込むものではなく、呼吸が安定することで自然に起こる現象です。
声帯を無理に閉じようとするほど逆効果になり、声の質を落としてしまうリスクがあります。
この記事では、声門閉鎖の基本的な仕組みと、なぜ「鍛えるもの」と誤解されやすいのかに触れていきます。
さらに、呼吸と声門閉鎖の関係をベルヌーイ効果の観点から解説します。
そのうえで、プロの歌手が呼吸トレーニングを重視する理由を紹介します。
最後に、実践的な方法を通じて、無理なく声門閉鎖を身につけるための具体的な練習法をお伝えします。
目次
声門閉鎖とは何か?その基本構造と役割を理解する
声門閉鎖の仕組みと声帯の動き
声門閉鎖は、左右の声帯が軽く触れ合いながら振動する現象です。
強く閉じることではなく、声帯が弾力をもって自然に開閉することが大切です。
無理な力をかけず、声帯のしなやかさを保つことが理想です。
声門閉鎖が発声に与える影響
声門閉鎖が適切だと、声に芯が生まれ、明瞭で安定した音になります。
閉鎖が弱いと息漏れが多くなり、強すぎると声が硬くなります。
ちょうどよい閉鎖が、聴きやすく響く声をつくります。
声門閉鎖が弱い・強すぎるとどうなる?
弱い閉鎖では声がかすれ、強すぎると喉の負担が増します。
どちらも声帯の振動が不安定になり、音がこもったり途切れたりします。
声帯が軽やかに動く範囲を見つけることがポイントです。
基礎から「息→振動→共鳴」の順で整理すると、声門閉鎖の“ちょうど良さ”が掴みやすくなります。
声門閉鎖を正しく起こる仕組み
息と声門閉鎖
声は、肺から送り出される息によって声帯が振動することで生まれます。
そして息が声帯の間を通り抜ける際、自然に声帯同士が吸い寄せられて閉じる現象が起こります。
これを「ベルヌーイ効果」といいます。
ベルヌーイ効果と声門閉鎖
ベルヌーイ効果とは、速度が速い流体(この場合は呼気)が狭い隙間(声帯の間)を通ることで流速が上がり、周囲の圧力が下がるために、声帯が自然に引き寄せられる現象です。
簡単に説明すると、速い息が声帯の間を通ると声帯は自然に閉鎖します。
理想的な声門閉鎖とは
理想的な声門閉鎖とは、呼吸の力によってベルヌーイ効果が働き、自然に起こる声門閉鎖のことです。
息の速さと圧力のバランスが整うことで、声帯は力を使わずに閉じられます。
呼吸が滑らかに続くと、声は安定し、響きが深く豊かになります。
呼吸の“支え”を作るほど、ベルヌーイ効果が働きやすくなり、閉鎖は結果として整います。
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声門閉鎖の誤解
声門を意識しすぎると喉が締まる理由
「閉じよう」と意識すると喉周りが固まります。 力むと声帯の繊細な動きが妨げられます。 閉鎖は“結果”であって“目的”ではありません。
声門閉鎖だけのトレーニングが不適切な理由
声門閉鎖だけを鍛えようとすると、喉周辺の筋肉に無駄な力みが生じ、息の流れが不安定になります。
その結果、ベルヌーイ効果が適切に働かず、声帯への負担が増え、呼吸との連動性も悪くなります。
このように、声帯を強く閉じるトレーニングだけを続けていると、結果として声の質が低下するリスクがあります。
プロ歌手が呼吸トレーニングを重視する理由
多くのプロの歌手は、声門閉鎖単体のトレーニングをほぼ行いません。
その理由は、正しい呼吸法を身につけると、自然な声門閉鎖が実現されるので、わざわざ声の質が下がるリスクのあるトレーニングは行わないのです。
※ただし、重度の発声障害やリハビリを要するケースでは、専門家の指導で一時的に声門閉鎖の特化練習をする場合があります。
「強く閉じる=声量UP」という誤解を、実際の響きと音響の視点から解いておくと理解が進みます。
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ベルヌーイ効果を意識した正しい声門閉鎖トレーニング
ストロートレーニング
呼吸を意識したボイトレが正しい声門閉鎖のボイトレです。
ベルヌーイ効果を活かした具体的なトレーニングとしては、「ストロー発声法」が代表的です。
ストローを使い、ゆっくり長く息を吐きながら声を出す練習を行うことで、声門閉鎖に必要な息の流れが身につきます。
風船トレーニング
また、「風船を膨らませる」練習も効果的です。
風船を大きく膨らませるには、一定で安定した息の流れが必要となり、余分な力みなく腹圧や息のコントロール力を高めることができます。
どのトレーニングも、「息の流れ」と「声帯の自然な閉鎖」をセットで体験できるため、無理なく本質的な発声力が養われます。
高音域の練習に置き換えると、息の安定と自然閉鎖の相乗効果を実感しやすくなります。
よくある誤解:ボーカルフライをすると声門閉鎖の強化になる
ボーカルフライとは
ボーカルフライは、声帯をゆっくり閉じて振動させ、低くバリバリと聞こえる発声です。
息はとても少なく、声帯の振動が通常よりもゆっくりになることで、この独特の音が生まれます。
このような声帯の使い方は、声帯をしっかり閉じる動きと密接に関係しています。
ボーカルフライの役割
発声練習では、起声の安定や、息を節約する感覚づくりに役立ちます。
ただし、これは声を作るメインの練習ではなく、あくまで補助的なエクササイズです。
必要なときに短時間だけ取り入れるのが正しい位置づけです。
ボーカルフライのやりすぎによる影響
ボーカルフライをやりすぎると、声がかすれたり、高い声が出にくくなったりします。
喉にヒリヒリした違和感が残ったり、翌朝の声が重くなることもあります。
特に高音が出にくくなる原因は、喉の使い方や息の流れにもあります。
不調を感じたときの対処法
痛み・違和感・高音の出にくさが出たら、その場で中止しましょう。翌日は休みを入れて回復させることが大切です。
不調な日に無理に行うと、声帯をさらに傷める原因になります。
呼吸と丹田の重要性
また、発声の安定には呼吸の支えも重要です。
ボーカルフライはやりすぎ注意
ボーカルフライは、確かに声帯の閉じる感覚をつかむには役立ちますが、「やればやるほど声が良くなる」というものではありません。
むしろ長時間繰り返すと、声帯に余計な負担をかけ、声がかすれたり高音が出づらくなったりするリスクがあります。
声帯への負担とリスク
特に、大きな音で無理に鳴らしたり、喉が疲れている状態で続けたりすると、声帯の粘膜がダメージを受けやすくなります。
結果として、本来の目的である“響きのある声”や“安定した発声”から遠ざかってしまうことも珍しくありません。
結論:声門閉鎖は「呼吸が主役」
呼吸が安定すればベルヌーイ効果が自然に働き、声門閉鎖は適切で安定した状態になります。
声門閉鎖だけを特化したトレーニングは原則不要であり、呼吸を整えることが発声力を最も高めます。
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