ミックスボイスという言葉は多くの場面で使われますが、その実体を正しく理解できている人は少ないのが現状です。

よく「地声と裏声の中間」や「両者を混ぜる」と説明されますが、実際には曖昧な中間点を探そうとすると、不安定な声になったり、声がひっくり返ったりすることがよくあります。

しかし、ミックスボイスは決して”地声と裏声を混ぜたり”“間を探す”ものではありません。

地声を最適化し、裏声を調整していくことで、自然と一つの滑らかな声――ミックスボイス――へとつながるのです。

ミックスボイスの歴史

私が音大生だった2000年前後には、「ミックスボイス」という言葉は一般的には使われていませんでした。

当時、似たような意味で使われていた言葉としては「チェンジ」がありました。

これは主にクラシックの分野で用いられていた表現です。

一方で、クラシック以外のジャンルではどのように呼ばれていたのかは、私には分かりません。

その後、2000年代中頃になると「ミックスボイス」という言葉が登場し始めました。

初期の段階では、主に“強い裏声”という意味合いで使われていたと思います。

そして現代では、「ミックスボイス」は単なる発声の種類ではなく、“歌い方”の一つとして捉えられるようになっていると感じます。

なぜミックスボイスは誤解されやすいのか

1「ミックスボイス=中間の声」?

「ミックスボイス=中間の声」という誤解は、非常に多くの人に見られます。

この誤解は、「地声」と「裏声」という二つの極端な声のちょうど真ん中に、何か“中間的な声”が存在する、というイメージから生まれます。

そのため、地声のまま無理に高音を出そうとしたり、裏声を少しだけ太くしようといった中途半端な発声をしてしまいがちです。

しかし実際には、「中間」という具体的な声質や音色が存在するわけではありません。

中間の声を作ろうとして無理な力みや曖昧な発声を続けることで、声帯や喉に負担がかかり、声が安定しなかったり、どっちつかずの弱い声になってしまうことが多くなります。

ミックスボイスは「地声でも裏声でもない“何か”」ではなく、地声と裏声、それぞれをボイトレで磨き、整える事で一つの響きを作り上げる技術です。

「中間の声」というイメージが誤解の原因となり、多くの人が本質から外れた練習をしてしまうことになります。

2「地声と裏声を混ぜる?」

「ミックスボイス=地声と裏声を単純に“混ぜる”だけ」という誤解も非常に多く見られます。

しかし、実際には地声と裏声を単純に同時に出したり、交互に切り替えたりすることは不可能です。

声帯は一度に一つの動きしかできず、地声と裏声は声帯の使い方自体が根本的に異なります。

そのため「混ぜる」という言葉から、“地声と裏声の中間音”を作ることだと勘違いされやすいのです。

このイメージによって、力任せに地声を押し上げたり、不安定な裏声を無理やり低音域で使おうとする発声になりやすくなります。

結果的に喉に負担がかかったり、響きが曇るなどの問題が起こりやすくなります。

実際のミックスボイスは、両方の特徴を「調和させて一体化させた発声」です。

しかし「混ぜる」という表現が誤解の元となり、多くの人が本質を見失いがちです。

目指すのは「混ぜる、間を探す」ではなく、統一されたという領域

ミックスボイスについて学ぶとき、多くの人が「地声と裏声を混ぜる」「ちょうど中間の音色を探す」というイメージを持ちがちです。しかし、この考え方がかえって発声の混乱や迷いを生み出します。

「混ぜる」「間を探す」というアプローチだと、地声でもなく裏声でもない“曖昧な声”を目指すことになりやすく、喉の力みや不安定な響き、声の芯のなさといった問題を引き起こしがちです。

実際、声帯は同時に地声と裏声を出すことはできませんし、音色や振動の仕組みも異なります。

“統一する”とはどういうことか?

ミックスボイスで最も大切なのは、地声と裏声がバラバラに聞こえてしまうことを防ぐことです。

地声と裏声が切り替わるたびに声の質感が変わってしまうと、歌声に統一感がなくなり、聴く人に違和感を与えてしまいます。

「統一する」とは、単に地声と裏声を混ぜたり、間を探したりするのではありません。

目指すのは、地声の「芯」や「太さ」、裏声の「高さ」や「柔軟さ」といったそれぞれの長所をバランスよく活かしながら、両方の声が同じような響きや質感になるように発声や体の使い方を工夫して、“ひとつの声”としてまとめ上げることです。

つまり、どの音域でも“同じ声”として違和感なく、一つにつながって聞こえる状態――それが本来のミックスボイスの姿です。

統一の実践

統一されたミックスボイスでは、音域が上がっても下がっても「芯」「太さ」「柔軟性」「響き」がひとつながりのイメージで保たれます。

身体の支え、息の流れ、共鳴の方向を常に意識し続けることで、どこにも無理や曖昧さのない、滑らかで存在感のある声が実現します。

地声の最適化がミックスボイスの出発点

ミックスボイスを習得するための第一歩は、地声そのものを“最適化”することです。

ここでいう最適化とは、単に大きな声を出すのではなく、喉や首に余計な力を入れず、芯のあるクリアな響きを得ることを指します。

多くの人は地声を出す際に無意識に喉を締めたり、息を過度に押し出したりしてしまいがちですが、これでは本来の地声のポテンシャルを引き出すことができません。

まずは息や身体の使い方を見直し、リラックスした状態で声帯の閉鎖や息の流れを効率よくコントロールできるようにします。

このプロセスを経ることで、地声にはしっかりとした「芯」や「安定感」、「存在感」が生まれます。

こうして地声が整うと、声の土台がしっかりし、高音域に移行する際もスムーズに橋渡しできるようになり、ミックスボイス習得の大きな助けとなります。

裏声の調整が高音域の安定を生む

ミックスボイスを安定して出すためには、裏声の調整も欠かせません。

裏声は本来、柔軟で高い音域をカバーできる一方で、息漏れが多かったり、声が細くて頼りなく感じることがよくあります。

そのため、まずは裏声で発声したときに息が無駄に漏れないよう、息の流れやコントロールを意識して発声します。

同時に、ただ細い裏声にならないよう、地声の持つ響きや“芯”をイメージしながら、裏声にも太さや存在感を感じられるように工夫していきます。

この時、完全に地声に寄せるのではなく、裏声らしい軽さや高さはそのまま活かすことがポイントです。

また、裏声を使っているときも、身体の支えや安定した息の流れといった“地声の感覚”を忘れずに持ち続けることが大切です。

こうして裏声を調整していくことで、「軽さ」と「芯」が融合しやすくなり、滑らかで響きのある高音域を実現できます。

「自然なミックスボイス」はこうして生まれる

「自然なミックスボイス」が生まれるプロセスは、地声と裏声、それぞれの質を高めることから始まります。

まずは地声を無理なく響かせる土台を作り、余計な力みを取り除いて“芯”と安定感を身につけます。

次に、裏声もただ高いだけの頼りない声ではなく、息の流れを整えながら響きや存在感を意識して発声します。

この両方をじっくり育てていくことで、二つの声の間にある“断絶”が少しずつ消え、声がなめらかに繋がる瞬間が訪れます。

決して「中間の声を作ろう」「混ぜよう」と焦る必要はなく、それぞれの声の特徴を十分に引き出すことが、結果的に自然で負担のないミックスボイスに繋がります。

この過程を積み重ねることで、高音も低音も一つながりで響き、表現力豊かな歌声を手に入れることができるのです。

よくある失敗と注意点

「曖昧な中間」を目指す練習は、多くの人がミックスボイスで陥りやすい落とし穴です。

地声と裏声の中間を“作ろう”と意識しすぎると、どっちつかずの頼りない声になり、結果として音程や響きが安定しなくなります。

また、無理に地声を高音域まで張り上げようとすると、喉に大きな負担がかかり、声帯を痛めてしまうリスクも高まります。

逆に、裏声ばかりで練習していると、声の芯や存在感が薄れ、力強さや安定感に欠けた発声になってしまいがちです。

このような失敗を避けるためには、どちらか一方に偏るのではなく、地声と裏声それぞれの質をしっかりと高めていくことが重要です。

一つひとつの声を丁寧に育てていくことで、自然に無理なくミックスボイスへと繋げることができるのです。

まとめ:ミックスボイスの本質

ミックスボイスは、「地声と裏声の中間の声」「地声と裏声を混ぜる」ではありません。

地声を最適化し、裏声を調整することで、自然と一つの“滑らかな声”が生まれる――それが本来のミックスボイスの姿です。

この視点で練習を重ねれば、誰でも自分らしいミックスボイスを手に入れることができます。

 

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