歌うことが好きで、もっと上手になりたい――。
そう思って声楽の世界に興味を持つ方は少なくありません。
しかし、いざ個人レッスンに申し込もうとすると、「未経験でも大丈夫?」「楽譜が読めないけど大丈夫?」「自分の声に自信がない…」と、不安が先立つ方も多いのではないでしょうか。
声楽は、特別な才能を持った人のものではありません。
身体の使い方を学び、正しくトレーニングしていけば、誰でも確実に変化を感じられるジャンルです。
特に個人レッスンは、一人ひとりの体の特徴や悩みに合わせて丁寧に進められるため、初心者にこそ最適な方法といえます。
本記事では、声楽初心者が個人レッスンでまず身につけたい「3つの基本」について、わかりやすく解説していきます。
これらを丁寧に積み重ねることが、将来どんな曲を歌うときにも役立つ”歌の土台”になります。
目次
第1章:「呼吸」〜身体で歌う感覚を知る〜
なぜ声楽では「腹式呼吸」が重視されるのか
「腹式呼吸」という言葉はよく耳にするかもしれませんが、実際に正しく行えている人は少数です。
声楽における呼吸は、単に「深く吸う」ことではなく、「身体全体で支える呼吸」です。
私たちが日常的にしている浅い呼吸では、歌うために必要な息の量や安定した吐き出しができません。
そこで必要になるのが「横隔膜の動きを活かした深い呼吸」です。
横隔膜は肺の下にあるドーム状の筋肉で、息を吸うと下がり、吐くと上がる働きをします。
この動きをサポートするために必要なのが「腹部の意識」です。
単にお腹を膨らませるのではなく、背中まで広がるような“胴体の中での空間の確保”を感じられるかどうかがポイントです。
よくある誤解:「お腹を膨らませればいい」ではない
多くの初心者が誤解しているのが、「腹式呼吸=お腹を大きく膨らませること」という理解です。
しかし、これは本質を捉えていません。
実際には、息を吸うときに膨らむのはお腹の前面だけでなく、脇腹、腰、背中の方向にも“立体的”に広がる感覚が必要です。
この広がりは、横隔膜が下がり、内臓が押し下げられることで生じる自然な変化であり、意識的に力を入れて膨らませるものではありません。
特に背中側に意識を持つことで、体の内側にしっかりと空間が生まれ、発声に必要な土台が安定します。
レッスンではこの「外から膨らませる」のではなく「内側から自然に広がる」感覚を丁寧に体験していくことで、浅い呼吸との違いを実感し、正
しい身体の使い方が徐々に身についていきます。
実践:レッスンで行う呼吸練習の一例
レッスンではまず、呼吸の質を高めるためのシンプルな練習から始めます。
たとえば、まず8〜10秒かけてゆっくりと息を吐ききります。
このとき、体の内側が徐々にしぼんでいく感覚を丁寧に味わうのがポイントです。
その後、胸を持ち上げず、肩にも力を入れずに、自然と息が身体に入ってくるのを待ちます。
このとき、お腹の前面だけでなく、脇腹や背中、腰まわりにかけて広がる感覚があるかを確認します。
息が入ると同時に、胴体が内側からふくらむような“張り”が生まれたら、それが「支え」の感覚です。
そして再び、同じようにゆっくりと息を吐いていきます。
この一連の動きを繰り返すことで、ただの“浅い呼吸”から、声を支えるための“深くて安定した呼吸”へと変化していきます。
発声の前段階としてこの呼吸を体に覚えさせることが、安定した声づくりの第一歩です。
第2章:「響き」〜“出す”から“響かせる”へ
「大きな声」ではなく「響く声」
声楽では「大きな声を出すこと」が目的ではなく、「響きを活かして豊かな音を生むこと」が重要です。
大声を出そうとして喉に力が入ると、声帯を過度に締め付けてしまい、音は強くても硬く、長時間歌うと疲労や痛みの原因になります。
一方、身体の内部、特に共鳴腔(口腔・咽頭腔)をうまく使うと、無理なく声が響き、自然と広がりを持った音が生まれます。
共鳴腔とは、声帯で生じた音が通過する空間のことで、ここを“空洞”として活かすことで音が増幅されます。
つまり、声そのもののパワーを上げなくても、響き方によって聴き手に伝わる音の大きさや豊かさは大きく変わるのです。
初心者が意識すべきは「どこから響かせるか」という感覚であり、喉の力ではなく“響く空間を整える”ことが、負担のない美しい声への近道となります。
初心者がまず気づくべき「響きの方向」
声楽初心者がまず体得したいのは、「響きをどこに導くか」という方向の感覚です。
特に意識してほしいのは、響きを鼻先や鼻腔に集めようとするのではなく、「上唇の裏から眉間にかけて」のエリアに響かせる感覚を持つことです。
ここは声が自然に前に抜け、かつ柔らかさと芯を兼ね備えた響きが生まれる“共鳴の通り道”です。
多くの初心者は、声を「出そう」「届かせよう」とするあまり、喉に力が入りすぎたり、口先だけで音を処理しようとする癖がついています。
こうした力みを減らし、体の内側で響きが“勝手に鳴っている”ような感覚をつかむことが大切です。
響きは、押し出すものではなく、身体という空間の中で「共鳴させて広げる」もの。
響きの方向が明確になると、声の響き方が一変し、無理のない自然な発声に近づいていきます。
実践:響きを感じる発声練習
響きを育てるための実践的な練習としておすすめなのが、「マ・ミ・ム・メ・モ」といった子音+母音の発声です。
特に「マ行」は口の中の空間を感じ取りやすく、響きを意識する練習に適しています。
まず、口を必要以上に大きく開けず、リラックスした自然な形で声を出しましょう。
大切なのは「声をどこに響かせたいか」を意識することです。
響きを上唇の裏〜眉間にかけて導くイメージを持ち、声がそこを通って前方に抜けていく感覚を探ります。
また、鏡を使って口元や顔の余計な力みがないか確認しながら行うと効果的です。
声が鼻先や喉奥にこもっていないか、自分の耳でもよく聴きましょう。
響きが適切な位置に収まると、喉への負担が減り、声の抜けや明るさも自然と増していきます。
このようなトレーニングを繰り返すことで、自分の“声の居場所”を少しずつ見つけていくことができます。
第3章:「言葉」〜歌詞を声に乗せる技術〜
「歌詞を読む力」は歌の表現力
声楽における最大の魅力は、「ただ声を出すこと」にとどまらず、その声に“言葉の意味”や“感情”を乗せて届けられる点にあります。
いくら響きのある美しい声でも、言葉が不明瞭であれば聴き手には内容が伝わらず、心を動かすことはできません。
一方で、発音が明瞭で一語一語が丁寧に響いていると、それだけで聴き手に深い印象を与えることができます。
特に歌詞の内容が感情と結びついたとき、その言葉が声を通じて“物語”として届きます。
つまり「読む力」は、単なる発音の技術ではなく、感情や表現力を支える重要な柱なのです。
レッスンでは、まず歌詞をゆっくり音読し、言葉の意味をしっかり理解しながら練習します。
その積み重ねが、歌の中に“魂”を込める第一歩となります。
子音と母音の扱い方を身につける
声楽初心者が最初に意識すべきポイントの一つが、「子音と母音の扱い方」です。
まず大切なのは、子音を明瞭に発音すること。
子音が弱いと、どれだけ音程や響きが良くても、歌詞が聞き取りづらくなってしまいます。
次に、母音の響きをしっかりと保つこと。
特に日本語は、話し言葉としては母音が曖昧になりやすいため、歌にすると薄く聞こえてしまうことが多く、注意が必要です。
そこでレッスンでは、子音をクリアに立てつつ、母音を響かせる練習を徹底して行います。
初学者には、日本語の童謡や発音が明快なイタリア語の歌曲を使うことが一般的です。
イタリア語は母音が強く明瞭に響くため、発声の基礎練習として非常に適しており、「音を乗せながら言葉を伝える」感覚を自然と身につけることができます。
実践:発音・歌詞読みの練習例
発音や歌詞の読み方を磨くための実践練習として、まず行いたいのが「ゆっくりとした音読」です。
ここでは、すべての子音と母音を一音ずつ丁寧に発音し、特に子音の輪郭をはっきりと立てることがポイントです。
次に、メロディを乗せずに“語るように読む”練習をします。
これにより、言葉の自然なイントネーションや抑揚、感情の流れをつかむことができます。
また、見落としがちな語尾や助詞、接続詞もしっかり扱いましょう。
たとえば「が」「を」「の」などは軽視されがちですが、音楽的な流れや意味の明確化には欠かせません。
これらの処理を丁寧に行うことで、聞き手にとって理解しやすく、感情が伝わる歌になります。
言葉の一音一音に細やかな注意を払うことは、声楽の“テクニック”というよりも“表現”の土台となる重要な作業なのです。
まとめ:「基本」を深めることが、遠回りに見えて一番の近道
声楽初心者が個人レッスンでまず身につけたい「3つのこと」
1. 呼吸:身体全体を使った深い呼吸の感覚を身につける
2. 響き:声を響かせる位置と方向を理解する
3. 言葉:発音・言葉の明瞭さを大切にする
これらはすべて「表面的なテクニック」ではなく、「声を出す身体の土台」として機能します。
一見遠回りに見える地道な練習が、結果としてあなたの声に一番の変化をもたらしてくれるのです。
個人レッスンでは、あなたの声のクセや身体の特徴を見極めながら、無理なく、着実にステップアップできます。
初めの一歩こそ丁寧に。
あなたの“本来の声”と出会う旅は、ここから始まります。
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そして、あなたの声が美しく、または力強く変化するかどうかを、ぜひお試しください。
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