こんにちは、ボイストレーナーの小谷泰久です。
高音を出そうとして喉仏が上がり、声が詰まる。カラオケのサビで「あと一歩」というところで喉が苦しくなる…そんな悩みはありませんか。
高音で喉仏が上がるのは、身体の自然な反応です。問題になるのは「過剰に上がりすぎてしまう」場合で、ここには本当の原因があります。
この記事では、高音で喉仏が過剰に上がる本当の原因と、自宅でできる5ステップのボイトレを順を追って解説します。
目次
高音で喉仏が上がる本当の原因
高音を出すときに喉仏がある程度上がるのは、身体の自然な反応です。声帯を伸ばす筋肉が働く際に、喉全体が少し引き上げられる動きが起こります。これは誰にでも起きる正常な反応で、ある程度上がるのは問題ありません。
ただ喉仏が過剰に上がってしまうと、声が詰まったり、苦しさを感じたりするようになります。この過剰に上がった状態は「ハイラリンクス」と呼ばれることもあります。
この喉仏が過剰に上がってしまう本当の原因は、高音を出すときに呼吸と喉の連動が失われて発声のバランスが崩れていることです。喉だけで声を出そうとすると、本来一緒に働くはずの呼吸が使われなくなります。すると発声のバランスが崩れ、その崩れをフォローしようとして喉仏が引き上げられてしまうのです。
ここからは、発声のバランスが崩れる主な原因を4つ見ていきます。
喉だけで音程を取ろうとしている
高音を出そうとしたとき、無意識に喉で音程を取ろうとしている方が多くいらっしゃいます。喉を意識して音の高さを合わせようとすると、喉に余計な力が入りやすくなります。
高音は、声帯が自然に伸びた状態で振動することで生まれます。喉を意識して音程を取ろうとすると、この自然な動きが妨げられ、声帯が伸びにくくなります。
喉に余計な力が入り続けると、喉だけで声を出そうとする方向に進みます。すると呼吸が使われなくなり、発声のバランスが崩れていきます。崩れた発声のバランスを保とうとして、本来動く必要のない筋肉が働きはじめ、結果として喉仏が引き上げられてしまうのです。
音程を喉で作ろうとすることが、喉に余計な力が入りすぎている状態を生んでいます。
喉だけで声を出してしまう癖の原因と改善法をより詳しく知りたい方は 喉で歌わない方法|喉で歌ってしまう原因と改善法 も参考になります。
息の流れが不安定になっている
息の流れが不安定だと、声も不安定になります。声は本来、息の流れの中で声帯が振動することで作られるからです。
息の流れが安定していれば声も安定しますが、息の流れが不安定になると、声帯の振動も不安定になり、発声のバランスが崩れます。崩れた発声のバランスを保とうとして、本来は動く必要のない筋肉が動きはじめ、結果として喉仏が引き上げられやすくなります。
特に高音は息の安定を強く必要とするため、息の流れが不安定だと喉仏の上がりやすさに直結します。
息を安定させるお腹の動きと腹式呼吸の仕組みを知りたい方は 歌うときお腹はへこます?ふくらむ?腹式呼吸の仕組みと正しいお腹の動きを解説 が参考になります。
姿勢が崩れている
姿勢の崩れも、高音で喉仏が上がる原因のひとつです。背中が丸くなったり、首が前に出たり、重心が前に傾いたりすると、呼吸が浅くなり、喉の筋肉も動きにくくなります。すると発声のバランスが崩れていきます。
崩れた発声のバランスを保とうとして、本来動く必要のない筋肉が動き、結果として喉仏が引き上げられます。カラオケでは立つ位置や体の使い方を意識しないまま歌うことが多いため、姿勢の崩れは特に注意したい要素です。
高音を意識しすぎている
高音を意識しすぎることも、喉仏が上がる原因になります。高音を出そうとすると「出るかな」「届くかな」と考えすぎてしまい、不安な気持ちが強くなります。
不安が強くなると呼吸が浅くなり、息の流れが不安定になります。すると発声のバランスが崩れていきます。崩れた発声のバランスを保とうとして、本来動く必要のない筋肉が動き、喉仏が引き上げられます。
これは緊張しているときの体の状態に似ています。カラオケでサビが近づくにつれ、無意識に体が緊張していることに気づかないまま歌っていることも多いものです。
緊張で声が不安定になる理由と改善の進め方を知りたい方は 歌うと声が震える原因とは?緊張だけではない声の震えと改善の第一歩 が参考になります。
喉仏が上がると歌うときの声がどうなるか
ここまで、高音で喉仏が過剰に上がる原因を見てきました。続いて、喉仏が過剰に上がると、声にどのような変化が起こるのかを見ていきます。
声帯が伸びにくくなり、高音が出しにくくなる
高音は、声帯が自然に伸びた状態で振動することで生まれます。
喉仏が過剰に上がると、喉や喉の中の筋肉まで余計な力が入り、固くなります。すると声帯を伸ばす筋肉も動きにくくなり、声帯がうまく伸びなくなります。声帯が伸びにくい状態では、出したい高音まで届きにくくなり、サビで声が止まったように感じられることもあります。
「あと半音届かない」「カラオケで急に音が出なくなる」と感じる場面は、この状態が起きていることが多くあります。
声が詰まり、ガラガラとしたノイズが出やすくなる
声は、息の流れの中で声帯が振動することで作られます。
喉仏が過剰に上がると、喉に余計な力が入り、声帯も必要以上に強く閉じやすくなります。声帯が強く閉じすぎると、息と声帯のバランスが取れなくなり、振動が不安定になります。すると声にザラザラ、ガラガラ、バリバリとしたノイズが混じりやすくなります。
高音ほどこの影響が出やすく、聞いた感じも詰まったように聞こえます。
声に混じるガラガラ・バリバリとしたノイズの原因と解決法を詳しく知りたい方は 歌っていると声にバリバリとノイズが入る原因と解決方法 が参考になります。
喉仏が過剰にあがるのは結果であって、原因ではない
ここまで見てきたように、喉仏が過剰に上がると、声帯の動きや声色に変化が起こります。
喉仏が過剰に上がるのは、発声のバランスが崩れていることから現れる動きです。詳しくは、呼吸と喉の連動が失われたために、本来動く必要のない筋肉が代わりに働いてしまい、その動きが喉仏に表れているのです。
喉仏が過剰に上がるのは、発声のバランスが崩れた結果として現れている動きです。本当のアプローチは、発声のバランスを取り戻す土台作りにあります。次の章では、その「土台」が具体的に何なのかを見ていきます。
喉仏を上げないために大切な3つの土台
前章で見たように、喉仏が過剰に上がるのは発声のバランスが崩れた結果として現れる動きです。だから本当のアプローチは、発声のバランスを整える土台作りにあります。
土台になるのは「姿勢」「呼吸」「意識」の3つです。なぜこの3つが土台になるのか、順番に見ていきます。
姿勢が発声のバランスを支える
姿勢は、呼吸と喉の働き方を直接左右します。背中が丸まったり首が前に出たりすると、息を吸う筋肉が動きにくくなり、呼吸が浅くなります。すると、発声のバランスが崩れやすくなります。
姿勢が整うと呼吸が深くなり、喉に余計な力を入れずに声が出せる体の状態が作れます。これが発声のバランスを支える最初の土台です。
息の流れが発声のバランスを保つ
声は、息の流れの中で声帯が振動して作られます。息の流れが安定していないと、声帯の振動も安定せず、発声のバランスが崩れます。高音ほどこの影響が大きく、息が止まったり弱くなったりすると、喉仏が過剰に上がりやすくなります。
息の流れを安定させるには丹田を意識することが大切で、これが発声のバランスを保つ2つ目の土台です。
意識の集中が発声のバランスを安定させる
歌っているときに意識が散漫だと、不安が強くなり、呼吸が浅くなります。すると発声のバランスが崩れ、喉仏が過剰に上がりやすくなります。
カラオケで高音のサビが近づくと「出るかな」「届くかな」と意識があちこちに飛びやすくなります。そんなときに意識を一点に集中させると、不安や考えすぎがあっても発声のバランスが安定します。これが3つ目の土台です。
姿勢・呼吸・意識の3つが整うと、発声のバランスが整い、喉仏が過剰に上がらない発声に近づきます。次の章では、この3つの土台を整え、さらに「裏声」「音程」を加えた5ステップのボイトレを紹介します。
呼吸の土台となる丹田がなぜ大切なのかを知りたい方は なぜ丹田はボイストレーニングで重要なのか? が参考になります。
高音で喉仏が上がらなくなる5ステップのボイトレ
ここからは、3つの土台を整えるための具体的な5つのステップを紹介します。順番には意味があり、ステップ1から順に取り組むと変化が出やすくなります。ステップ4とステップ5は、土台ができた上での応用ステップです。
ステップ1:姿勢を整える
姿勢を整えることは、喉に余計な力が入らない発声の土台になります。目的は、声を出す力が体全体に分散する状態を作ることです。
ポイントは5つあります。
- 重心:踵に意識を置きます。重心が踵側にあると、上半身が前に倒れにくくなり、余計な力が抜けやすくなります。
- 膝:股関節を少し開くように立ち、膝は軽く緩めます。膝が緩むと、下半身に余計な力が入りにくくなり、呼吸も使いやすくなります。
- 腰:両手を腰に軽く当てて、まっすぐ立てているかを確認します。
- 胸:両手を前で組んでゆっくり息を吸うと、胸が自然に少し沈んだフォームになります。この感覚を覚えておきます。
- 顎:後ろへ引く意識を持ちます。顎が後ろに引かれた位置にあると、喉に余計な力が入りにくくなります。
この5つを意識して立つだけで、発声のバランスが整いやすい土台ができます。
ステップ2:呼吸を整える(丹田を意識する)
呼吸のトレーニングで大切なのは、丹田を意識することです。
丹田は、おへそから指2〜3本下にある下腹部の場所です。下腹部に手を当てて息を限界まで吐いたとき、下腹部に自然に力が入る場所が丹田です。
もし息を限界まで吐いても丹田の位置が分かりにくい場合は、息を吐くときに喉に余計な力が入っている可能性があります。その場合は、顎の下を指で軽く押さえ、そこが柔らかいまま息を限界まで吐くようにすると、丹田が使われている感覚が掴めます。
丹田を意識すると、息の流れが安定します。息の流れが安定すれば、発声のバランスが整いはじめ、喉に余計な力が入りにくくなります。
練習は順番に進めます。まず「S」や「F」の音で、息だけを出します。次に「HO」「HA」「FU」などの発音で、息に声を乗せます。ほっぺたを軽く膨らませながら「FU」で声を出すと、喉に力を入れずに丹田を使う感覚が掴みやすくなります。
この練習を繰り返すと、丹田を使って声を出している感覚が掴め、発声のバランスが整っていきます。
ステップ2の丹田がうまく使えないと感じる方は 丹田に力が入らない方へ|丹田に力を入れる方法と確認のポイント で確認のポイントがわかります。
ステップ3:一点に意識を集中させる
高音で喉仏が上がる原因のひとつに「意識の散漫」があります。意識が散漫だと、不安が強くなり、発声のバランスが崩れます。意識を一点に集中させると、この崩れを防ぎやすくなります。
練習はこう進めます。
- 息を飛ばす:部屋の中の遠くの一点を見つめ、その一点に向かって息を短く「フッ」と飛ばします。そのとき、丹田に自然で素早い力が入る感覚を確認します。次に、同じ一点に向かって息を長く出します。このときも、丹田に素早く力が入るかを確認します。
- 声を飛ばす:同じ一点に向かって、今度は「FU」の発音で声を短く飛ばします。丹田に素早く力が入る感覚を確認します。次に、声を長く伸ばします。このときも、丹田を意識します。
この練習を繰り返すと、一点に意識を集中させて声を出す感覚が身についていきます。意識が一点に集中していると、不安や考えすぎがあっても発声のバランスが崩れにくくなります。
ステップ4:軽い裏声で「ホー」と発声する
軽い裏声で「ホー」と発声する練習は、高音を出すときに必要な声帯の動きを感じやすくする練習です。目的は、声帯が自然に伸びる感覚を掴むことです。
やり方は、力を入れすぎない軽い裏声で「ホー」と声を出し、その声に丹田を意識した息を乗せていきます。裏声では、声帯が高音に向かって自然に伸びやすくなります。そこに丹田から流れる十分な息が加わると、声帯を伸ばす働きも無理なく続き、喉に余計な力を入れずに音を作る感覚が掴めます。
息が足りないと、途中で喉に余計な力が入りやすくなります。息をしっかり流すことを意識すると、喉の負担が減り、結果として喉仏が過剰に上がらない発声につながっていきます。
裏声を鍛えると声にどんな変化があるのかを知りたい方は 裏声だけで歌う効果とは?裏声を鍛えることで得られる声の変化 が参考になります。
ステップ5:音程の取り方を変える
音程は、息の流れと声帯の自然な働きから生まれます。この感覚が身につくと、喉に余計な力を入れずに高音が出せるようになります。
ステップ5の目的は、息と声帯の働きに音程を任せる感覚を掴むことです。多くの方は無意識に喉の力で音程を取る癖がついていることがあるため、別の感覚に置き換えていく練習です。
練習では、まず出したい音の高さを耳でしっかり聴き、その音を頭の中でイメージします。次に、丹田を意識しながら息をたっぷり使って声を出します。「HO」「HU」などの発音は、喉に余計な力が入りにくく、息の流れを感じやすいため、この練習に向いています。
高音ほど、丹田を意識することが大切です。十分な息の流れがあると、声帯は自然に細く長く伸び、その働きで音程が作られます。息を使って音程を取る感覚が身につくと、高音でも喉仏が過剰に上がらず、音程も安定していきます。
5つのステップを順番に取り組むと、発声のバランスが整い、喉仏が過剰に上がらない発声に近づいていきます。次の章では、この変化を妨げる「やってはいけないNG行動」を紹介します。
高音の練習でやってはいけないNG行動
5ステップを実践していく中で、知らず知らずのうちにやってしまいがちなNG行動があります。これらの行動は、せっかく整えはじめた発声のバランスを崩してしまうため、注意が必要です。
喉仏を無理に下げようとする
「喉仏が上がるなら下げればいい」と考え、意識的に喉仏を下げようとしてしまう方がいらっしゃいます。力ずくで喉仏を下げようとすると、喉に別の余計な力が入り、結果として発声のバランスがさらに崩れます。
喉仏は、発声のバランスが整えば自然な位置に収まる動きです。改善は、5ステップで紹介した土台作りに取り組むことから始まります。
顎を強く引きすぎる
「喉が開く」「響きが出る」と思い、顎を強く引き込んでしまう方がいらっしゃいます。
顎を強く引きすぎると、顎の下や首の前側が硬くなり、喉に余計な力が入ります。すると発声のバランスが崩れ、喉仏が引き上げられる動きにつながります。
顎は、軽く後ろへ引く意識を持つ程度で十分です。
喉で無理矢理声を出そうとする
高音を出そうとするとき、喉に力を込めて声を無理矢理出してしまう方がいらっしゃいます。これは、息の流れが足りていないことを喉の力で補おうとしている状態です。
喉で無理矢理声を出すと、声帯が必要以上に強く閉じ、息と声帯のバランスが取れなくなります。すると発声のバランスが大きく崩れ、喉仏が過剰に上がる動きが強く現れます。
声は、息の流れが声帯を振動させて生まれるものです。十分な息の流れがあれば、喉に余計な力を入れずに声が出せます。5ステップの練習の中で、息の流れを使う感覚を身につけていきます。
これらのNG行動を避けながら、5ステップを順番に積み重ねていくことで、発声のバランスが整い、喉仏が過剰に上がらない高音発声へ近づいていきます。
まとめ:喉だけで声を出そうとせず、土台から順番に整える
高音で喉仏が過剰に上がるのは、喉だけで声を出そうとしたときに発声のバランスが崩れ、その動きが喉仏に表れている状態です。
改善のポイントは、姿勢・呼吸・意識という3つの土台を整え、その上で5ステップのボイトレを順番に積み重ねていくことです。順番を守って続けていくと、発声のバランスが整い、喉仏が過剰に上がらない高音発声に近づいていきます。
練習の効果は、2週間から1ヶ月ほど続けると感じやすくなります。日によって調子の波があるのも自然なことです。小さな変化を丁寧に感じ取りながら、焦らず取り組んでみてください。






