歌の練習やボイストレーニングの話題に触れていると、「裏声」や「ファルセット」という言葉をよく見かけます。
どちらも高い音を出すときに使われる言葉として紹介されることが多く、何となく似たものとして受け取られていることも少なくありません。
一方で、ある解説では裏声と呼ばれていた声が、別の解説ではファルセットと呼ばれていることもあり、言葉の違いに戸惑う場面もあります。
同じように高い声を出しているはずなのに、呼び方が変わるだけで、別の声を出しているように感じてしまうこともあるかもしれません。
結論から整理すると、日本ではファルセットと裏声を同じ仕組みの声としてまとめて扱うことが多く、海外では声の聞こえ方や質感の違いによって言葉を使い分ける考え方が一般的です。
この違いは、声そのものが大きく違うというより、声をどう整理し、どんな基準で名前を付けているかの違いから生まれています。
この記事では、ファルセットと裏声の違いについて、日本と海外それぞれの考え方を順に見ていきながら、言葉の違いを落ち着いて理解するための視点をまとめていきます。
ファルセットと裏声の違いとは?
日本のボイストレーニングでの基本的な考え方
日本のボイストレーニングや歌の解説では、声は比較的シンプルに説明されることが多くあります。
よく使われるのが、地声と裏声という二つの分け方です。
話すときに近い低い声を地声とし、それよりも高い音域で使われる声を裏声としてまとめる形です。
この考え方の中では、ファルセットという言葉も、裏声とほぼ同じ意味で使われることがよくあります。
解説する人によっては裏声という言葉を使わず、ファルセットという呼び方を選ぶこともあり、どちらの言葉も入れ替え可能なものとして扱われやすい傾向があります。
そのため、日本ではファルセットと裏声をはっきり別の声として区別する場面はあまり多くありません。
この背景には、日本語ならではの言葉の使いやすさも関係しています。
裏声という言葉は、「地声ではない高い声」という意味が直感的に伝わりやすく、説明の中で使いやすい表現です。
一方でファルセットは外来語で、少し専門的な響きを持つ言葉として使われることが多くあります。
ただし、どちらの言葉を使っていても、実際に指している声の範囲が大きく変わることはあまりありません。
そのため、日本の文脈では「ファルセットと裏声の違いは何か」と聞かれたときに、「同じものとして考えてよい」と説明されることも珍しくありません。
これは、日本の声の分け方の中では自然な整理の仕方と言えます。
高音域で起こる声帯の変化
高い音を出すときには、声帯の状態が低い音のときとは少し変わります。
音が高くなるにつれて、声帯は引き伸ばされるような形になり、全体として薄くなる方向に変化します。
日本では、高い声を出したときの声の音色を細かく分けずに、まとめて裏声やファルセットと呼ぶ説明がよく使われます。
「どんな音色になっているか」よりも、「高い音を出している」という点を重視して説明されやすいのが特徴です。
そのため、声帯の状態の違いよりも、音の高さが呼び方の基準になりやすくなります。
その結果、ファルセットと裏声は、別々の出し方を指す言葉というより、高い声を指す言い方の違いとして使われることが多くなります。
この分類の仕方は、大まかに理解するには分かりやすい一方で、用語の違いを細かく知ろうとすると物足りなく感じられることもあります。
ただ、日本では最初から細かい分類を目的としていないため、このような説明が一般的になってきました。
呼び方が違っても声の仕組みは同じ
日本でファルセットと裏声が混ざって使われやすい理由は、同じ高音域のを人によってフルセットと呼んだり裏声と呼んでいることにあります。
呼び名が変わっても、声が生まれる仕組み自体が違うものとして説明されることはほとんどありません。
そのため、日本では「ファルセットか裏声か」という違いよりも、「地声か高い声か」という分け方のほうが重視されやすくなります。
用語の違いは、説明する人の立場や使っている資料によって変わるものとして受け取られることが多いのです。
この点を知っておくと、言葉の違いに必要以上に迷わずにすみます。
日本の考え方では、ファルセットと裏声は厳密に分ける対象ではなく、同じ高音域の声を指す別の呼び方として整理されてきたと言えます。
裏声という言葉がどのように使われてきたのかについては 裏声だけで歌う効果とは?裏声を鍛えることで得られる声の変化 で詳しく解説しています。
海外ではファルセットと裏声をどう分けている?
英語圏で使われる声の分類
海外のボイストレーニングや歌の解説を見ていくと、日本とは少し違った前提で声の名前が使われていることに気づきます。
英語圏では、声を大きく地声と裏声に分けるというより、声の聞こえ方や使われ方に応じて言葉を使い分ける傾向があります。
その中で、ファルセットという言葉は、高音域の声の一部を指す名称として使われることが多くあります。
日本のように「高い声=裏声」とまとめるのではなく、「どんな響き方をしているか」「どう聞こえるか」によって呼び名が変わる場面が見られます。
ちなみに海外では弱い裏声をファルセット、強い裏声をヘッドボイスと呼ぶ傾向にあります。
このため、日本で裏声と呼ばれてきた声が、海外では別の名前で説明されることもあります。
ここで大切なのは、海外の分類が新しい声を作るためのものではないという点です。
あくまで、同じ高音域の中に見られる違いを言葉で整理するために、いくつかの名称が使われていると考えると分かりやすくなります。
ヘッドボイスについては、ヘッド ボイスの出し方|高音が楽になる3つの練習ステップで、詳しく解説しています。
声の質感による呼び分け
海外での考え方の特徴としてよく挙げられるのが、声の高さよりも質感に注目する点です。
同じ高い音であっても、軽く抜けるように聞こえる声と、しっかりとした印象を持つ声では、別の呼び方がされることがあります。
このとき重視されているのは、音域そのものではなく、声の聞こえ方や印象です。
高さが同じであっても、柔らかく聞こえるか、はっきり聞こえるかによって、使われる言葉が変わることがあります。
ファルセットという言葉は、こうした質感の違いを表すために使われることが多い名称の一つです。
日本では音域を基準に声を分けることが多いため、この質感による呼び分けは少し分かりにくく感じられることもあります。
しかし海外では、声の聞こえ方を説明するための便利な整理として、自然に受け取られてきました。
同じ高音域でも表現が変わる理由
同じ高音域の声であっても、海外の解説では違う名前で呼ばれることがあります。
これは、声の仕組みが途中で切り替わっているからではありません。
声の高さは同じでも、聞こえ方や使い方が違えば、別の言葉で説明されるという考え方です。
たとえば、楽曲の中で軽やかに使われる高音と、メロディをしっかり支えるように使われる高音とでは、同じ高さでも役割が異なります。
その違いを言葉で区別するために、複数の名称が用いられています。
このように、海外でのファルセットの位置づけは、「高い声の一種」というより、「高音域にある声の中の、特定の聞こえ方を指す言葉」として理解すると整理しやすくなります。
日本と海外の説明が食い違って感じられるのは、声そのものではなく、言葉の使いどころが違っているためです。
日本と海外で解釈が分かれる理由
日本に多いシンプルな声の分け方
日本では、声の分類ができるだけ分かりやすく整理されてきました。
地声と裏声という二つの分け方は、その代表的な例です。
このシンプルさは、初めて歌や発声に触れる人にとって理解しやすいという利点があります。
一方で、この分け方では、高音域の中にある細かな違いが言葉として表に出にくくなります。
そのため、海外の解説を目にしたときに、「なぜこんなに呼び方が多いのだろう」と感じやすくなります。
日本の整理は、声の全体像を大づかみに捉えるためのものだと考えると納得しやすくなります。
海外で重視される声の状態
海外の考え方では、声は一つの固定された種類として扱われるより、連続的に変化するものとして説明されることが多くあります。
そのため、声の状態や聞こえ方の違いを表すために、複数の言葉が使われてきました。
この背景には、声をできるだけ細かく言葉にして共有しようとする文化があります。
同じ高音であっても、「どのように聞こえるか」「どの場面で使われるか」を説明するために、呼び名が増えていきました。
その結果、日本よりも用語が多く感じられることがあります。
用語の違いが混乱を生みやすい理由
ファルセットと裏声の違いが分かりにくく感じられるのは、同じ声を指しているにもかかわらず、使われる言葉が一致していないためです。
日本の説明と海外の説明を並べて見ると、前提となる分類の考え方が違っていることが分かります。
どちらかが正しく、どちらかが間違っているという話ではありません。
それぞれの国や分野で、声を説明するために選ばれてきた言葉が違うだけです。
この点を押さえておくと、説明の違いに戸惑いにくくなります。
声の説明で用語が増えやすい理由については 声門閉鎖と発声の関係を徹底解説 でより詳しく触れています。
よくある誤解
裏声やファルセットは弱い声なのか
裏声やファルセットについてよく聞かれるのが、「弱い声」「頼りない声」というイメージです。
高い音を出すときに使われる声という説明と結びついて、そのように受け取られることがあります。
ただ、このイメージは言葉の使われ方から生まれたもので、声そのものの性質をそのまま表しているわけではありません。
日本では、高音域の声をまとめて裏声と呼ぶことが多いため、「地声ではない声=弱い」という印象が重なりやすくなります。
ファルセットという言葉も、軽く抜けるような高音を指す説明の中で使われることが多く、同じような印象を持たれやすくなっています。
実際には、裏声やファルセットという言葉は、声の強さを直接示すものではありません。
あくまで、どの音域で使われる声か、どのように分類されているかを示すための呼び名です。
弱いか強いかという評価とは、別の軸で使われている言葉だと整理すると、誤解が生まれにくくなります。
声が軽く聞こえる本当の理由
高音域の声が軽く聞こえるとき、それがすぐに「ファルセットだから」「裏声だから」と説明されることがあります。
しかし、これは言葉の便利さゆえに起きやすいまとめ方です。
同じ裏声やファルセットと呼ばれる声でも、聞こえ方には幅があります。
軽く感じられる場合もあれば、はっきりとした印象を持つ場合もあります。
この違いは、声の名前そのものより、使われている場面や表現のされ方によって生じています。
海外の解説では、この「聞こえ方の違い」を説明するために、言葉を細かく使い分けることがあります。
一方、日本では、同じ範囲の声をまとめて呼ぶことが多いため、聞こえ方の違いが言葉として表に出にくくなります。
その結果、「軽く聞こえる声=ファルセット」という単純な結びつきが生まれやすくなります。
言葉のイメージが声を縛ってしまうこと
裏声やファルセットという言葉には、それぞれにイメージがつきやすい特徴があります。
裏声と聞くと「裏に回った声」、ファルセットと聞くと「作られた声」という印象を持つ人もいます。
こうしたイメージは、説明を分かりやすくする一方で、言葉だけが一人歩きしてしまうこともあります。
本来は同じ範囲の声を指しているにもかかわらず、言葉の印象によって別物のように感じられてしまう場面もあります。
言葉はあくまで整理のための道具です。
イメージが強くなり過ぎると、声そのものを見る前に、名前で判断してしまいやすくなります。
ファルセットと裏声の違いを考えるときは、言葉が持つ印象と、実際に指している内容を切り分けて捉えることが大切です。
声にまつわる誤解が生まれやすいポイントについては 喉で歌わない方法|プロが教える喉が楽になる発声法 にまとめています。
まとめ
ファルセットと裏声をどう捉えるとよいか
ファルセットと裏声の違いは、声の仕組みがまったく別という話ではありません。
日本では同じ高音域の声としてまとめて扱われることが多く、海外では聞こえ方や質感の違いをもとに言葉が使い分けられています。
どちらの考え方も、声を説明するための整理の仕方の違いです。
日本の説明はシンプルで分かりやすく、海外の説明は細かな違いを言葉にしやすいという特徴があります。
その違いを知っておくことで、説明の食い違いにも落ち着いて向き合いやすくなります。
言葉よりも声の捉え方に目を向ける
ファルセットか裏声かという問いは、言葉の整理としては意味がありますが、それ自体が答えになるわけではありません。
大切なのは、どの言葉が正しいかを決めることではなく、それぞれの言葉がどのような前提で使われているかを理解することです。
日本の説明と海外の説明を比べたときに混乱しやすいのは、同じ声を違う基準で切り取っているためです。
基準が違えば、使われる言葉が変わるのは自然なことだと言えます。
高音を表す言葉としての位置づけ
ファルセットや裏声という言葉は、高音域の声を説明するために使われてきた呼び名です。
それぞれの言葉が生まれた背景や使われ方を知ることで、用語の違いを必要以上に難しく感じずにすみます。
最終的には、言葉そのものに振り回されるより、「この説明はどの視点から話されているのか」を意識することが役立ちます。
ファルセットと裏声の違いは、声の正解を決める話ではなく、言葉の整理の仕方の違いとして捉えると、全体像が見えやすくなります。
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